爆発
 豆電球一つきりの寒々しい明かりが部屋を照らしている。それは床や天井に最低限何があるかを目視させられるだけの光を投げかけているのだが、正直言って俺にとってはそんなものよりマグライトでも自前で用意した方が遥かにマシだった。またそれを言うなら、こんな臭くて暗くてじめじめした常人なら確実に住まないような不潔そのものの場所で会話をするよりも外に行った方がよっぽど素敵な提案だ。排ガスと埃で汚れきった空気をどんな季節にも関わらず吹き付ける寒風がかき乱しているが、もう慣れきったのでそれはあまり気にならない。しかし、目の前で明らかに客である俺より上等なイスに腰を落ち着けているハゲ頭はそれを絶対に嫌がるだろうと思うので、俺はこうしてぼろっちい小学生しか座らないようなイスにケツを押し込んでいるのだ。


 金壷眼の闇医者はさっきからカルテらしきものに何かを書きつけていた……俺がここに来たのは、通りをぶらぶらと女のケツを眺めながら歩いていたら急激に性病に罹っていないかどうか知りたくなったのだ。無頓着な性格ではあったが覚えがあったし、《虫の知らせ》のようなものをその時俺は感じ取った。またこの闇医者はどういうわけか無料で性病関連についてはチェックしてくれるというから(以前にそういった種類の病気に罹ってから、同じ病気を持っているかもしれない人間には優しくなったという噂がある)から、俺はここにやってきたのだ。


「でまあ、ちょっと血液診たけどさ、ダメだわ。死ぬ」
あだ名が木魚である闇医者は、すべすべしているというよりむしろ油に塗れたように光っている頭をごしごしと片手で撫でながらあっさりと言ってのけた。なるほど、木魚なんてみすぼらしい別名をつけられるわけだ。俺はいきなりつきつけられた死亡宣告に驚くというよりも、むしろ闇医者が下卑たジョークを発しているだけのように思えてうんざりした顔をした。ただ木魚は顔色を一切変えなかったのだが。


「あんたさ、もうちょっとうまいジョークを言った方が良いぜ。折角検査に来てやったのにその言い草はなんだよ。地球上の人類はすべからく糞ですなんて言ってるみたいだぜ」


「実際そうだからな、俺は。人類が滅べば直ちに大自然どもが影響力を回復して人類の痕跡を跡形も無く消し去るだろうね。ちなみに性病は罹ってないぞ、代わりに別の病気に罹ってる。ハゲタカの糞を四乗したみたいな奴だ」


「ふーん。具体的にどんなの?」


 あっさりしてるなお前、と言いたそうな顔をして木魚は立ち上がる。こいつが動くさまはさぞかし太りすぎたカバかトドを思わせる。だぶんだぶんのでぶんでぶんという感じだ。擬音だと可愛く聞こえるのだが、実際汗まみれで胸の脂肪を音を立てて揺らしている様を見たら思わず殴りたくなる。


 木魚は少し離れた所にある棚から分厚い辞書を取り出してページを捲り始める。こいつよくこんな暗い中で読めるな……きっと目が暗闇に特化したんだろう。あれだ、ひきこもりか。本のタイトルにはちらっとアルファベットが並んでいるのが見えたが、英語とは少し違う気がした。ドイツ語とかフランス語とか、スペイン語とかだろう。あれ、スペインってもう消滅してたっけ?


「うーんとだなあ。まず、潜伏期間は一週間、その後頭痛、倦怠感、関節の痛みを覚えはじめる。これが第一段階、第二段階に入ると幻聴、幻覚が発生して高熱も出る。ここあたりになると肺炎に罹ったみたいなもんだな、行動にかなり支障がでる。最終段階では強い脱力感、精神錯乱、吐き気と眩暈に交互に襲われるようになる。あとついでに小便が止まらなくなる。それから」


「もういいです、最後だけ教えて下さい。簡潔に、さくっと」
死ぬことは何度も考えたことがあるが、まさかそんな運命がこれから先に待ち受けているとは思わなかったので、なんだか頭が痛くなってきた気がする。あーくそ、これが最初の兆候かもしれん。ちくしょう、なんてアホらしい死に様だ。


「最後は、全身が膨れ上がって細菌が作り出したガスが体内に充満し、ボン。爆発ね、これ。それまではあくまでも体内で潜伏したままなので、最後の瞬間まで膨らむことはない。当然本人は死ぬ。エアコンプレッサーで空気を入れすぎた浮き輪の如くあたりに内臓と脳味噌が飛び散るな。その際肉体と一緒に細菌が飛び散るが、もともと強い細菌じゃないからすぐに死ぬ。つまり、実質的に死ぬのはお前一人だ」


「今まで想像したこともない最低の死に様なんだが、それ」


「最悪だねえ。まあお前みたいなクズの末路としちゃ妥当じゃないか? どうせロクな生き方してないだろ、お前。死んでくれて清々するよ」


「お前さ、俺が死ぬ前に喉笛掻っ切ってやろうか?」


 まさか初対面の人間にさえそこまで口が悪いとは思わなかった。これ以上何か言ったら木魚の頭を捕まえて机の角にハゲ頭を叩きつけてやろうかと思っていたが、木魚は肩を竦めて黙った。


「しかし、この症例って結構珍しいな。俺の所に結構ヤバイ情報は入ってくるけどさ、過去にあったのは南アフリカでだけだ。しかもこれ、細菌兵器実験中の事故でだぞ? 日本のここに無条件で飛んでくる代物じゃない。何か覚えとかないか?」


「覚え、ねぇ…………」
 俺は首を捻ってそれらしい事柄を脳味噌の中から洗い出そうとするのだが、しかし多すぎる。しばらく首をひねっていると、あ、と俺は閃いた。


「一週間前、イランからやってきた女をやった。本人は逃げてきたとか言ってたが、金持ってたんで殺して犯して首切って齧った。遺体は山の中に埋めた」
 性病に罹っているかもしれないと不安になったのも、そいつを犯したからだ。なにせ外国人だし、エイズにかかっていてもおかしくはない。今じゃ日本人でも怪しいが。


 俺の言葉を聞きながら、木魚が隅においてあったデスクトップを弄り始める。覗き見しようとすると灰皿で殴りかかってきたので慌てて後退する。少し時間が経つと木魚は「あーなるほどねえ」と口に出した。


「やっぱ情報網引っ掛かってたわ。中東で細菌兵器からの漏洩事故があった。もう国じゃ戒厳令敷いて感染者の隔離はじめてるらしいけど、多分そのイラン人は閉じ込められる直前に逃げてきたんだろう。検査もしないで逃げ出すってことは地下運動の人間とかそこらだな……お前、そんなのやったのか。マジでイカレてるな」


「いやあそれほどでも」
 褒められているわけではないが、皮肉をぶつけてやるつもりで俺は頭を下げる。木魚は心底軽蔑した顔で鼻を鳴らすと、デスクトップの電源を切って俺に向き直る。


「で、これからどうすんだ? お前は」
 木魚はそれなりに気になるらしく、さっきとは違って俺の顔を真正面から見つめる。するとどうしてか俺は頬のあたりに痒みを覚えて掻き始める。どれほど掻いても掻痒の感覚は消え去らなくて困っていると、「第一段階だわ、それ」と木魚は口を挟んだ。


「あっそ。まあリミット一杯ぶらぶらして、最終日には人気の無い所か病院……それかもしくは軍用研究所でも行くさ。そこなら安楽死させてもらえるだろ」
 子供の頃に一度だけ見たことのある、大きなフェンスと有刺鉄線で囲まれた建物を思い浮かべる。外では防塵マスクをつけて物々しい銃器を持ったロボットみたいな兵士たちが見張りについていた。中に入る前にあいつらに撃ち殺されないだろうか?


「そうか。とりあえずここにはもう来るな。理論的には経口や血液じゃない限り感染はしないだろうが、何も無いとは言い切れない。それに何かの手違いで俺の所で爆発されたらかなり困ったことになる」


「いいねそれ。で、リミットいつ?」


「今から計算すれば十日後。まだ時間あってよかったな、精々余生を過ごせやクズ」


「最後の最後までムカつく奴だな、お前」



 朝日が目に痛かった。俺は目を覚ますと、隣で眠っていたホームレスの体を横にずらして起き上がる。伸びをすると体の中に活気が満ちてくる気がした――その直後、関節の節々に痛みが走る。うげ、と呻いて俺は顔を顰める。おそるおそる腕や膝に手を伸ばしてみると、ぴりぴりと電気が走っているような痛み。うわあ、マジ発症してんじゃん俺。あと十日しかないのかよ人生。


 立ち上がって服の埃を払うと、行く当てもなく俺は歩き出した。


 スラム街の一角を出て中央街まで出ると、人の顔ぶれも変わる。清潔そうなスーツを着たサラリーマンが忙しそうにせかせかと早足で歩き、ベビーカーに赤ん坊を乗せた母親がダルそうに歩道を歩いていた。完全完璧な死を目前にして何か心境に変化があるか……と思っていたが、何もなかった。いつものように、こいつらの脳味噌か心臓を取り出して見てみたいと思うだけだった。俺は大きなため息をついて、ぶらぶらと歩き続ける。道行く人が俺の姿を見てゲロでも目にしたように顔を顰めていた。


 ポケットの中に手を突っ込むと小銭があったので、俺はコンビニでサンドイッチを買って、公園へと向かう。ぼんやりとサンドイッチをつまみながら空を眺めていると、手の力が緩んでサンドイッチを落としてしまった。まずい、と思って拾い上げると、いつのまにか俺のすぐ目の前に犬がいた。


 小さい犬だった。前にこういうのを見た気がする……コーギーと言うんだっけ? へっへっと暑そうに舌を出して尻尾を振っている様子はなんとも見ていて滑稽だ。その視線が思いっきりサンドイッチに向けられていたので、俺が指差して、食いたいのか? と聞いてみると、わふんと小さくコーギーが吼えた。そうか、これ食いたいのかお前。


 四分の一を千切って差し出すと、むしゃむしゃとうまそうに犬は麺麭と麺麭との間にクローン肉を挟んだだけの代物を食っていた。それを胃の中に飲み込んでしまうと、犬はもう無いのか、と俺をじっと見つめてきた。あまり長く見ているとついつい残りもやってしまいそうな気がしたので、俺は一気に食いあげてしまう。動物にそこまで慈悲をかけられるほど余裕があるわけではない。コーギーは俺の行動をじっと見ていたが、鳴いたり吼えたりすることはなくじっと無言で見ていた。むしろそれが俺にとっては突き刺さる。


 腹に何かを入れると心持がついたので、俺は誰も居ないブランコに座る。犬もどういうわけかついてきた。きーきーと痛々しげに音を響かせる前時代的なブランコに乗っていると、なんだか悲しくなってきた。犬は俺の脇に寝そべり、公園の遊具を硝子球のような瞳で見ていた。俺も遊具を見てみたのだが、すぐに飽きて太陽を観察することにした。どちらも違いが無いかもしれないが、太陽はこうしている間にも爆発を繰り返しているのだ。鉄製の無機物を見ているよりは建設的だ。


 思えば、俺の人生は何だったのだろうか? 親父がいて、お袋が居て、妹もいた。どこにでもありそうな普通の家だったが、普通の家と違うのは親父の頭が夜になると狂いだすことで、お袋は同じように宗教へと狂いの方向をシフトさせていたということだ。名前も分からない長ったらしい神様の名前をぶつぶつと十何時間も飽きずに唱え続け、親父は自室で酒を飲み、飽きたら俺かお袋か妹を殴っていた。妹は高校に通っていたが、一度親父がバット片手に殴りこんできて教師に重傷を負わせてから行かなくなった。お袋は妹が中学生のあたりまでは理性があったのだが、高校に上がって入学式のお祝いに神様役の男にキスしてもらったことが切っ掛けで脳味噌が完全に溶けてしまって更に神様とのランデブーに夢中になっていった。


 俺は何のために勉強するかも分からない大学をすっぱりと退学してから家でゴロゴロしていたのだが、妹が一日中家にいるようになってウザくなった。妹はどういうわけかブラコンの気があって俺の部屋によく入り浸っていたが、高校をやめるとそれが毎日になったのだ。毎日毎日俺の部屋で本を読んだりCDを聞いたり、終いには「お父さんとお母さん捨てて、二人で逃げちゃおうか?」とか言い出すので、ここらで俺はこの一家からは手を切るべきだと思った。確かに他の二人と比べて頭は悪くなかったが、顔が致命的に悪かったのだ。あれだ、蟷螂と蜂を足して二で割ってから塩酸を顔面に塗りつけた感じ。これで顔がまともなら悩んだかもしれないが、顔が悪いので論外だった。悪いな、俺も案外腐ってるんだ。


 ということで俺は妹に内緒で家を一人で飛び出し、有り金叩いて電車を乗りついでやってきたここでホームレスに近い生活を送っていたというわけだ。最初はバイトもしていたのだが、途中で警察の手が入って家出状態の俺は家に連れ戻されるのだと危機感を覚えた。そのうち家の人間が捜索届けを出すわけがないことに気がついたのだが、もう後の祭りで働く意欲は全く完全これっぽっちも失せてしまっていた。そういうわけで、俺はホームレスやってたり、暇つぶしに盗んだり殴ったり婆さんを埋めたり、ついでに小学生や中学生をレイプしたりして過ごしてきたのだ。昔は治安が良かったらしいが今ではヤク中やアル中どもがうろつきまわって好きに犯罪を犯しているので俺も便乗しやすい。勿論警察のウンコ共はフル稼働だが、あまり人気の無い所には近寄ろうとしないので根本的な所ではまだまだイケる。


 なんだ、思い起こしてみれば俺最低じゃないか。改めてため息が出てきた。犬は欠伸をしていた。


 他に行く宛も無かったので、夕方あたりまでブランコに乗ったり遊具で遊んでみたり、砂場の砂は食べられるかどうか試したりして過ごしていた。周りの人気は完全に失せ、今では俺と犬しか公園にはいなかった。もう人は家に帰る時間だし、帰らないと襲われるかもしれないからだ。今の時代に夜中うろつくのは俺のような人非人か兵士ぐらいのものだ。


 夕焼けに照らされた犬はあまりにも無防備だったため、俺はちっちっと音を出して犬を呼んでみた。頭のてっぺん辺りがこれまで感じたことの無い痒みを主張しているので、片手で強く引っ掻く。血が出ても構わないというかスッキリする。俺が指を出していると犬は寄ってきた。更に俺が手を近づけても後ずさる兆候は無い。


 これは、もしかしたら、触れるかもしれない。ゴリッと頭の上で嫌な音がしたが、痛みは感じない。


 痒みはどうにか我慢できる程度におさまってきた。俺は両手を出して顎の下に入れて、くすぐるような感じで撫でようとする。


 すると犬はこれまでの大人しさが嘘のようにガァッと凄まじい声を上げると、手を思いっきり噛んでから俺に向けて小便をし始めた。呆然としている俺のズボンに黄色い小水を最後の一滴まで放出すると、犬は俺に背を向けて走り出し、公園の出口へと消えた。


 俺は手の噛み傷をじっと見つめながら、どうしてあの犬を解体して食わなかったのかを不思議に思い始めていた。



 六日ほど俺は無為に過ごした。生きたままバラバラにしてやろうかと思ったが犬は見つからなかった。起きて、ゴミを漁って、誰かの金を奪って飯を買って、ぶらぶらと歩いて、昼寝して、残った金で夕飯を買い、公衆テレビで暇を潰し、寝場所に戻って寝た。たまに誰かを殺して食ったが、あまり美味しくはなかった。仕方が無いので盗品を売る。そこそこ金になる。店の主人に俺が死に至る病に感染していることを話してみようかと何の因果かそう考えたことはあるのだが、あまりにもそいつの顔がぶさいくなもので話す気が失せた。俺はムードや物語性を大事にするんだ。


 病気が俺の中で進行しているのは強く感じられた。頭痛、倦怠感、幻覚、幻聴。本当に酷いというか最低のものだった。人波が上に行ったり下に行ったりしているので、俺が気付いていないだけで地震でも起きているのかと思っていた。テレビのアナウンサーがしゃべると赤ん坊の泣き声が聞こえてきた。耳が痛くなって血が流れていると思えば、なんてこともなくそこには何もない。一度何の前触れも無く膝が体から取れて地面に落ちたのが見えたが、一分ほど目を閉じて深呼吸していると、膝は元に戻っていた。


 幻覚と幻聴が併発しているせいか感覚がおかしくなっていた。一つの物が二つに感じられたり、顔を触っても砂と同じにしか思えなかったり、飯を食っても泥を食っている感触しかしなかった。熱も出てきて動くのが厄介になり、目の前がかすんで飛蚊症のような症状も出てきた。これまで世界に負わせてきたツケが俺にそのまま流れ込んでいるみたいだった。何度も失神し、何度も吐いた。吐く度にオレンジ色の寄生虫や緑色の靴が出てきて嫌になる。もしこれが現実なら俺は十足近い靴を胃の中に納めているのだ。


 頭の中がおかしくなっていく様が手に取るように分かった。脳味噌が腐っていくシーンをモニターで見ているようで、ああ今はあそこがおかしいんだなとか、今の時間帯はこの部分が腐っていて、だんだん本当に死んでいくとか、そういうのが明白すぎるほど理解できた。普段と比べて異常なほど明晰というよりむしろ発熱している俺の頭脳に残った寿命を計算させてみたが、そう長くは無いという抽象的なものだけしかでてこなくて俺は失望した。がっくりきたので夜道をさ迷っていたガキを潰して脳味噌を交換しようとしたのだが、そうすると俺の脳味噌も取り出すことになってしまうことをガキの脳を取り出した時点で気付いたので、打ち捨てた。気が向いたら誰かが食うだろう。


 結局、俺は何だったのだろうか? 


 それも分からなかった。なんだ、大してよくないじゃないか俺の頭。むしろ悪すぎる。


 今まで会った人間たちが、殺した人間たちが、迷惑をかけた人間たちが目の前を横切り思い思いの表情で消えていった。あー、みんなすまんね。俺なんかのために人生を消費させちゃって。お詫びに死ぬからさ、俺。いやまあつまんない見世物かもしんないけどさ。ほら、腹なんてグズグズになっちゃってもうひどいもんだぜ。指の先も黒くなってまるで凍傷だ。


 ホームレスの群れの中にある俺専用の寝場所に横たわりながら、俺は静かに夜空を見ていた。俺は阿呆だ。救いようの無い馬鹿だ。地獄に落ちて鬼どもに貪り食われて消滅することしか能が無い人間だ。どうして俺が生まれてきたのだろう? どうしてお袋の腹から出てきたのだろう? どうして神様なんてのは俺を天から引き摺り下ろそうと思ったのだろう? 考えれば考えるほどに思考はこんがらがっていきどす黒い触手で絡め取られていった。


 酷い生き方だった。本当に。


 今まで生きてきて一つも誇れる所が無い。あの犬だって、俺がついていくに値しない人間だからあんな行動を取ったのだろう。他の人間ならもっと別な事をしたのかもしれない。


 ふぅ、と肺から搾り出すような息をする。このままいっそ死んでしまえばいいが、体は激痛を訴えるばかりで冷たくなることは無い。まだ苦しめと仰るんですかい、神様。


 ああくそ、感傷的だな俺。らしくない。畜生、本当にらしくない。


 目を開けたままの暗黒。視覚聴覚嗅覚味覚触覚全てがシャットダウンされているのに意識が明らかという矛盾。俺の脳味噌は燃えている。肉をバーナーで炙るみたいに静かに燃やす脳味噌、燃やされる俺の脳。いずれ体の中も燃えてしまうに違いない、最初は頭からだ。ははは、面白くない。まるで面白くない。


 家に戻ろう、と闇の底からその考えを俺はいつのまにか掬い出していた。家。親父。お袋。あと妹。馬鹿共の家、馬鹿が馬鹿を産んで馬鹿にした馬鹿の家。あそこに戻る? 行ってどうする? 何と言う?


 とりあえず、会おう。会って土下座するなりなんなりしてみよう。俺の中に新たに生まれたそれはそう言っていた。


 それなら、まだ生きている価値はある。俺はもう一度息を吸い込み、眠るよう努力をした。暗黒は長い間苦痛と不快を伴う黒と赤が入り混じった空間だったが、やがて無味無色の何も無い所に変わった。


 一週間目の朝、俺は激痛と病気という猛毒で悲鳴を上げる体を無理矢理動かして家へと向かった。畜生、どうして俺は家からこんなに遠い場所へとやってきたんだ。


 休み休み歩き、バスに乗って下りてまた乗って歩いて、幸運なことに一回だけ失神しただけで俺は夕方前には家近くへと辿り着くことができた。爆発の前段階か、指が膨れて乗降ボタンを押すのに苦労した。


 俺の家は住宅街の真ん中にあるが、この健康状態ではチャイムを押すことさえ不可能だ。その前に倒れて野垂れ死にか身ぐるみ剥がれてしまう。俺は一休みするため、家近くの駐車場で腰を下すことにした。既に視界すら狭まり始めているので、周りもよく見えない。


 だから腰を下そうと思った車止めに既に先客がいたとしても、気付けなかった。そいつも気付かなかったようで、気付いた時には二人はぶつかってしまっていた。俺は慌てたせいで尻餅をついて、相手はそこから退きながらも俺を見ているようだった。


「……、す、ません」
 声が出ないのでひゅうひゅうとした風のようなものしか出てこない。俺は必死に頭を下げると、ぶつかった相手は「オニイチャン?」とタイ語のような言葉を発した。


「は?」


「……お兄ちゃんなの?」
 そう口にする相手の顔がよく見えない。俺が近づこうとすると、相手は体ごとぶつかってきて俺は倒れそうになった。抱きしめられていることに気がついた。え……こいつ…………もしかして、………


「……妹?」
 俺がいつも呼んでいた呼称で改めて呼ぶと、その相手はそうそう、妹妹、と言ってきた。


 マジかよ。



「顔、変わってるな、お前」
 駐車場に座りなおしてから改めて顔を見ると、妹の顔は昔と比べて随分良くなっていた。芸能人とまではいかないまでも、夜道でレイプされるだけの価値は十分にある。妹は俯いて、「整形したから、顔中」と言った。金がかなりかかるだろうが、どこから工面したのだろう。それについては明かさなかったが、おかげで顔が時たま引き攣ることは聞いた。


「親父とお袋は?」


「死んだ。お母さんお父さんを殺して首吊ったみたい。私今一人暮らし」


「そっか」


「お兄ちゃんは、どこで何してたの?」


「聞かない方がいい」


「……分かった」
 それきり妹は黙った。俺も黙り、話題が無くなった。


 咳が出てきて、妹は「お兄ちゃん病気?」と訊ねてきた。それくらいは答えたほうがいいだろうと思い、ああ、と言った。そうなの、と妹は返した。もうすぐ死ぬことについては言わないことにした。なんというか……ちょっと、辛いかもしれないと思ったからだ。おいおい、顔が良くなったらかなり労わらなきゃって気持ちになってきぞ。すごいな顔。


「それで、ホームシックになって帰って来たの?」


「まあ、……そんなとこだ。すまないな、こんな兄貴で」
 少しは喉が持ち直したのか、簡単な会話ぐらいは出来る。これならこの場ぐらいは乗り切れそうだ。妹はううん、と首を振った。


「お兄ちゃんだけじゃないよ。私だってダメな子だよ……お兄ちゃんに頼りきりで、そのくせ自分じゃなにもしないし、自分を磨く努力も何もしないし」
 妹は空を見上げながら、自戒するように口にする。俺からすれば十分なほど聖人君子と思える言葉なのだが、きっとそれが一般人とクズとの違いなのだろう。


「でも、帰ってきてくれて良かった。これから一緒に暮らそう? 私、今お隣の武田さんから仕事紹介してもらってるの。色々と生活もお世話になってるし。お兄ちゃんがんばって看病するから、治ったら働けるよ」
 なるほど、きっと整形の費用もそいつが負担したのか。俺が知らないということは、新しく引っ越してきた人に違いない。


「…………、いや、無理なんだ、俺は。本当に。もう働けないし、一緒にいても邪魔だし。だから今日はな、最後にお別れを言いにきたんだ」


「お別れ……」
 俺の言葉がまるで気の置けない友人の訃報にでも聞こえたのか、妹は顔面を覆って泣きはじめた。昔の家にいたころの俺なら笑って無視するような行動だが、今の俺にとってはそうは思えなかった。無性にやりきれない気持ちになった。


「だから、さ、……ええと、こんな悪い兄貴で申し訳ない」
 どうすればいいのか分からなくて、俺は頭を下げた。妹は泣いていたが、構わず俺は頭を下げる。正直見ていられなかった。


「……うう、ひっく、えぐ、ぶ、ぅぅうううううぐううう……」
 妹は鼻水を垂らして泣きながら、俺の言葉を聞く。いや、本当に聞いているのだろうか? 俺は不安になってきたが、とりあえず撤回するわけにもいかなかった。つーか泣き方不細工だな、お前。


「今まで想像もできないぐらいの迷惑をかけて、本当に悪かった。これからはもうお前の目の前には現れないし、警察の厄介にもならない。ひっそりと死んでいく積もりだ。だから――」


 言い終わらないうちに、妹が再び抱きついてきた。


「連れてって」
 涙声だったが、その言葉ははっきりと聞こえた。
「今度こそ、私、連れてって」


 家でのシーンが脳内で重なって、俺は言葉が詰まった。前回は牛女みたいな顔だったが、今回は割とまともだ。どうする俺。


「迷惑をかけたと思うなら、悪いと思うなら、今度こそ一緒に連れてって。どこでもいい。ホームレスでも、日雇い労働者でも、なんでもいい。お兄ちゃんと一緒に行きたい。もう一人きりはやだ。絶対行きたい」


「だけど……」


「お願いします、連れて行ってください。お兄ちゃんと一緒に生きて行きたいんです。どんな酷い生活でも構いません」


「……」
 俺は黙ってしまった。黙るしかなかった。息を吸い込んで、吐き出して、頭を掻く。既に感覚は無かった。


 もう俺が死ぬまで何日も無いだろう。もしかしたら、俺が死ぬ瞬間に妹を巻き込んでしまうかもしれない……いや、その時は軍の研究所か病院に連れて行ってもらおう、事情を説明して。それなら納得してくれるはずだ。


「分かった」
 俺はそれだけ言った。というか、喉が痛くなり始めてそれしか言えなかった。


「やった!」
 妹は小躍りしそうな声音で言うと、早速といわんばかりに立ち上がった。


「それじゃ、私家から通帳持ってくるね。お兄ちゃ…………え?」


「ん?」


 妹の不思議そうな声で俺は気がついた。


 さっきから手足のふくらみが酷いな、とは思っていたのだが改めてみると親指の太さが腕ぐらいにまでなっていた。更に見ると足は丸太同然で、驚くことに胴体が空気でも注入されているように膨らみ始めていた。は? いや何これ? え?


 そこで木魚の顔が浮かんだ。一秒以下、コンマの世界で俺はあらゆる知識と記憶を総動員して判断した。


 あの糞野郎騙しやがった俺のことを手玉にとってこんな状況を引き起こしやがった豚の糞の金壷眼の中折れのファッキンデブ。


「嘘だろ」
 本能が理解していたが、そんな言葉が口から零れた。背筋を寒いものが走り抜けようとして、居心地がいいのか離れようとしない。出てけボケ。


「お兄ちゃん、大きい」
 妹が俺と同じくらい呆然とした表情になって口にする。俺は笑いそうになった――なにせ、妹モノのAVで聞くような言葉だからだ。いやそんなのをついつい想像してしまう俺も悪いんだが。


 顔面は既に風船になっており、水を詰め込んだ如く体はボンレスハムになっている。腕足頭股間全てにおいて爆発という言葉を想起するほど膨らみ馬鹿らしい大きさになる。ガスだ、これが細菌の作り出すガスだ。


 頭の中の木魚を縊り殺してやる前に、俺は爆発した。
 


 木魚は飛行機のファーストクラスのシートに腰を沈めながら、チューインガムをくちゃくちゃと噛んでいた。ヘビースモーカーだが煙草はダメなのでこれしか持ち込めないのだ。口を開けながらぐちゃぐちゃと噛む様は隣に乗客がいれば侮蔑に満ちた表情でもするかもしれないが、今日はここには木魚一人しかいない。


 ゆったりとふかふかの感触を楽しみながら、木魚は眼前に展開したモニターがアメリカ北西部の天気を告げるのを見守った。あと何時間経てばモニターに軍用の病原菌が蔓延したというニュースが流れるのか、考えると楽しくなってくる。


 あのクズに細菌について伝えた際、嘘をついたことが一つ、言っていないことが一つあった。


 嘘をついたことは、爆発のリミット。実は十日でなく七日だ。


 隠していたことは細菌の感染力。周りに飛び散った細菌は瞬時に消滅するのではなく、十時間近い間生存するのだ。その間にもし壁のヒビなどのスキマから入り込んで誰かの体に感染した場合、細菌は急速繁殖し、数十分足らずで連鎖的な爆発を引き起こす。爆発によって散らばった細菌は既に最終段階に入っており、感染したすぐ後で爆発が引き起こされるのだ。そうした特性を鑑みて、木魚はその細菌を《パズル菌》と名づけている。昔のゲームみたいに、連鎖するとどんどん効果が広がっていくからだ。まあこの細菌においては効果が広がるだけ廃墟が広がることを意味するが。


 おそらくあのクズは最終日になってから行動を起こすだろうから、できればそれまでの段階で爆発して欲しかった。だから期日をズラして伝えたのだ。あいつは確かスラム街で寝泊りしていたから、爆発するとすれば町中かそこらへんだろう。まだ日本での認知度は低いし兵器としても採用していなかったから、爆発的に細菌は広がるに違いない。あの国は経済的にも社会的にも政治的にも大きな打撃を受け、大災害の後には廃墟と死体と略奪と強盗が残されるに違いない。つまるところ国としての価値は三等国以下となる。


 そうした出来事を予言してやることで、木魚はかなりの得をすることができた。あのクズが感染してくれて良かった……だからこそ、あいつが出て行った後で木魚は組織の上層部に話をつけて、一週間足らずでできるだけマーケットから人員や物資を引き上げさせ、その謝礼を貰うことができたのだから。飛行機に乗る直前に確認した口座の金額を思い浮かべて、木魚は顔をにやけさせる。


 雲の上空に出た飛行機の窓から下を覗き、今頃は惨事が大勢をしめているだろう日本列島を想像する。阿鼻叫喚、地獄絵図。いやはや、有象無象どもが死んでくれてありがたい。核を使うよりこっちの方がよっぽど手っ取り早い。向こうについてからの行動について色々と思考を巡らせながら、木魚はこう思った。


 まあ、あのクズも死ぬ前に人の役に立つことができたのだから満足だろう。
復路鵜
2008年06月06日(金) 08時56分50秒 公開
■この作品の著作権は復路鵜さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
SS祭り作品。似非SFです。
前半部分がやたらと鬼畜なくせに後半になるとしおらしい。うーむ、なんだこれ。

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Click!! Click!! Click!! 50 Liliam ■2017-04-25 13:54:04 46.161.14.99
Click!! -20 Keydrick ■2017-04-25 11:51:57 46.161.14.99
Click!! Click!! Click!! Click!! 50 Linx ■2017-04-25 11:23:47 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! Click!! 30 Suzyn ■2017-04-25 09:35:05 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! Click!! 50 Allie ■2017-04-25 09:07:55 5.188.211.170
Click!! Click!! 30 Jasemin ■2017-04-25 08:54:38 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! Click!! -30 Stitches ■2017-04-25 08:29:45 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! -30 Latricia ■2017-04-25 07:11:12 46.161.14.99
Click!! Click!! Click!! Click!! 10 Rock ■2017-04-25 06:43:31 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! -20 Essence ■2017-04-24 23:58:55 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! Click!! 30 Terrah ■2017-04-24 22:51:07 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! Click!! 10 Cade ■2017-04-24 22:40:13 5.188.211.170
Click!! Click!! -30 Voncile ■2017-04-24 22:04:15 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! Click!! 50 Jesslyn ■2017-04-24 21:43:52 46.161.14.99
Click!! Click!! Click!! 30 Shirley ■2017-04-24 21:11:10 46.161.14.99
Click!! Click!! Click!! Click!! 50 Kailin ■2017-04-24 19:40:44 46.161.14.99
Click!! -20 Tassilyn ■2017-04-24 18:38:13 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! Click!! Click!! 30 Rennifer ■2017-04-24 18:36:18 5.188.211.170
Click!! 50 Christy ■2017-04-24 17:52:33 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! -20 Daveigh ■2017-04-24 17:13:40 46.161.14.99
Click!! -20 Buck ■2017-04-24 15:51:00 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! -30 Joyelle ■2017-04-24 14:45:11 46.161.14.99
Click!! 30 Geraldine ■2017-04-24 13:57:53 46.161.14.99
Click!! Click!! Click!! Click!! 50 Laicee ■2017-04-24 12:52:49 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! Click!! 30 Marylada ■2017-04-24 12:52:19 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! Click!! -20 Susy ■2017-04-24 12:38:45 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! -20 Pebbles ■2017-04-24 09:28:31 46.161.14.99
Click!! Click!! Click!! Click!! 30 Kristanna ■2017-04-24 06:23:26 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! Click!! Click!! 30 Char ■2017-04-24 04:32:42 5.188.211.170
Click!! 10 Jean ■2017-04-23 22:53:35 46.161.14.99
Click!! 30 Jock ■2017-04-23 20:59:46 5.188.211.170
Click!! -20 Forever ■2017-04-23 20:48:42 5.188.211.170
Click!! -30 Bones ■2017-04-23 20:24:23 5.188.211.170
Click!! -30 Rumor ■2017-04-23 18:41:39 5.188.211.170
Click!! 10 Hollie ■2017-04-23 17:23:04 46.161.14.99
Click!! 30 Millicent ■2017-04-23 15:01:08 5.188.211.170
Click!! 50 Janai ■2017-04-23 13:51:52 5.188.211.170
Click!! 50 Deandre ■2017-04-23 13:43:05 46.161.14.99
Click!! 50 Tish ■2017-04-23 13:20:50 46.161.14.99
Click!! 10 Lidia ■2017-04-23 12:19:12 5.188.211.170
Click!! -30 Leatrix ■2017-04-23 10:50:44 5.188.211.170
Click!! 30 Armena ■2017-04-23 10:08:53 46.161.14.99
Click!! -20 Latasha ■2017-04-23 09:37:29 46.161.14.99
Click!! -20 Ellyanna ■2017-04-23 08:58:45 5.188.211.170
Click!! -20 Rayonna ■2017-04-23 08:47:50 5.188.211.170
Click!! 30 Gerry ■2017-04-23 07:44:30 5.188.211.170
Click!! -30 Scout ■2017-04-23 06:29:43 5.188.211.170
Click!! 10 Kaleigh ■2017-04-23 03:01:59 46.161.14.99
Click!! 10 Aslan ■2017-04-23 02:10:19 46.161.14.99
Click!! Click!! Click!! Click!! -20 Melissa ■2017-04-22 23:34:26 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! 30 Jodie ■2017-04-22 22:54:23 46.161.14.99
Click!! Click!! -20 Brandice ■2017-04-22 21:34:29 46.161.14.99
Click!! Click!! Click!! Click!! Click!! 10 Janais ■2017-04-22 21:14:53 5.188.211.170
Click!! 10 Lyddy ■2017-04-22 20:46:37 46.161.14.99
Click!! Click!! Click!! Click!! -30 Aslan ■2017-04-22 18:27:03 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! 50 Janelle ■2017-04-22 17:01:02 46.161.14.99
Click!! Click!! Click!! Click!! -30 Makailah ■2017-04-22 16:20:16 46.161.14.99
Click!! Click!! Click!! Click!! -20 Dreama ■2017-04-22 15:34:50 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! -30 China ■2017-04-22 15:32:43 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! Click!! Click!! -30 Ivalene ■2017-04-22 15:27:26 46.161.14.99
Click!! 50 Caroline ■2017-04-22 15:10:41 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! Click!! Click!! -20 Bear ■2017-04-22 13:16:19 46.161.14.99
Click!! 50 Terry ■2017-04-22 12:26:07 5.188.211.170
Click!! Click!! -20 Cammie ■2017-04-22 11:10:17 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! Click!! Click!! -20 Billybob ■2017-04-22 09:26:19 5.188.211.170
Click!! 50 Kalie ■2017-04-22 08:54:16 46.161.14.99
Click!! Click!! Click!! 10 Darence ■2017-04-22 07:51:41 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! Click!! Click!! 10 Andralyn ■2017-04-22 07:29:32 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! Click!! Click!! 30 Johnie ■2017-04-22 05:08:48 46.161.14.99
Click!! 50 Foge ■2017-04-22 04:42:45 46.161.14.99
Click!! Click!! Click!! Click!! Click!! 10 Nollie ■2017-04-22 02:00:29 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! 50 Melloney ■2017-04-22 01:42:03 5.188.211.170
Click!! -30 China ■2017-04-22 00:42:51 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! Click!! Click!! 30 Youngy ■2017-04-21 22:20:11 46.161.14.99
Click!! Click!! Click!! 50 Millie ■2017-04-21 21:38:33 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! Click!! 50 Jayne ■2017-04-21 17:20:06 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! 10 Patty ■2017-04-19 13:35:39 5.188.211.170
Click!! Click!! 30 Flora ■2017-04-18 22:38:44 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! Click!! 30 Ryne ■2017-04-18 18:41:19 46.161.14.99
Click!! Click!! 30 Eldora ■2017-04-18 18:19:18 46.161.14.99
Click!! Click!! Click!! Click!! Click!! 10 Mimosa ■2017-04-18 18:05:37 46.161.14.99
Click!! Click!! 10 Jenay ■2017-04-18 17:53:07 5.188.211.170
合計 1040
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