【艦これ】未来を、貴方に、我らに(上)
twitter企画『深夜の艦これSS60分勝負』にて、投稿したSSの再加工版となります。
この作品は、上・中・下における《上》の作品になります。
テーマ:反省
登場キャラ:愛宕 高雄 金剛 など
企画についてはこちらからどうぞ:http://mizunanana.web.fc2.com/kancolle.htm
twitter検索は #深夜の艦これSS60分勝負 で、どうぞ!

 爆炎と共に戦艦が沈んでいくのを、高雄は捉える。場所は鎮守府から遠く、深海棲艦らの勢力が根強い地域であった。彼女がいつも磨いていた砲塔から炎が吹き出し、黒煙が真っ青な海に異様な情景を与えている。高雄はなすすべなくそれを見つめながら、煙の真下で深海へと消えていく戦艦金剛と、彼女が囮になって沈めた敵艦たちを思う。戦艦一に対して深海棲艦十数隻以上。用いる弾薬や資源の比率を考えれば、得たものはそれ以上である。だがこの戦果は、妥当なのか。

「提督……武運長久、を……」

 金剛のものらしき今際の通信が聞こえる。その声に悲惨さはなく、諦観のような、あるいは免れない自身の轟沈を悟ったかのような淡々とした声に高雄は鳥肌が立った。今すぐ通信を切ってしまいたかったが、金剛の声か、あるいは旗艦であり無線中継を代表するという意思のせいか、それはできなかった。高雄は、静寂さを取り戻していく海から、他の艦娘たちに目を移した――高雄に随伴する艦娘たちは四隻、最上、陸奥、そして今回の訓練対象である駆逐艦たち。めいめいの表情で金剛が沈んでいく様を、そして彼女から染みだした重油によって炎上が止まない海を、為す術もなく見つめる。誰にも助けようがなく、止めようがなかった轟沈。

 そもそもこの作戦自体が鎮守府認可のものであった。

 上層部、そして提督による承認印を押され、秘書艦(これは高雄の仕事であった)によって手続きされた作戦は本部によって受理され、金剛はこの危険な海で独断専行した。そして提督の命令に従い、近隣の敵艦全てを引き受けるため、大々的な生贄となった。一人で他の艦を撃破しながら、雨あられと降り注ぐ砲弾と弾丸と雷撃に削られていく金剛。そして襲来する敵攻撃機たち。結果は成功であり、多数の戦果を上げ――金剛は沈んだ。かの第二次大戦の最中、特攻同然に突っ込んだ大和と同じ結果であったが、おそらく今頃、提督が上げているとすれば喝采以外の何物でもない。

 かの洋上の彼方に位置する我らが鎮守府は、これによって他の鎮守府に比べて抜きん出た戦果を……あるいは、それ以上の物を得ることになるだろう。艦娘を生き餌にして。高雄はうつむき、唇を噛み締めた。

 静まりゆく轟音と爆発音の間に、誰かがすすり泣く声が聞こえた。それが駆逐艦のものだろうと戦艦のものだろうと、高雄にとってはどうでも良かった。金剛は轟沈したのだ。海の下に沈んでゆく彼女の意識は、ここにはいない提督の幻影に抱かれているのかも知れない。あるいは予想し得なかった無限の苦痛に苛まれ、恥も外聞もなく喚き散らしているのかもしれない。全て死にゆく彼女にしかわからないことで、海の上に位置する高雄には、百万光年も遠い話だ。駆逐艦の一人、電が口を開こうとして、高雄が遮った。

「高雄、さん――」

「お願い、少し静かにして」

 電はその通りにした。少しして、うつむきがちな彼女から嗚咽が聞こえてきた。それに対する罪悪感を覚えながらも高雄は、柳眉を逆立て、決死の思いで鎮守府を睨みつけた。

 これで八人目だ。



 轟沈した金剛の遺物で発見できたのは、彼女が身につけていた髪飾りだけだった。煤と油で汚れた残骸が痛々しい。沈み始めた太陽の残照が照り返しを映し出す中、高雄たちは遅い出撃から帰投した。出て行った時よりも一隻少ないため、帰りの陣形はややいびつだった。

 出港に用いる桟橋には、何名かの艦娘たちが待機しているのが見えた。六、七、八、九名、それ以上――遠目からも見える仰々しい砲塔や、白い巫女姿の彼女たちは、すぐに判別できる。

 彼女たち全員が金剛だった。横に並んだ彼女たちは、さながら出迎えをする水兵のように高雄たちを出迎えた。その表情は様々であったが、共通点と言えば、笑っているものは一人もいないことだった。最期の通信は無論鎮守府にも届き、そしてそれは提督から金剛らに伝えられたに違いない。戦艦用に割り当てられた寄宿舎で彼女たちは何を考えたのか。それもまた高雄には知り得ない。

「お帰りなさい、デス」
 艦娘たちの真ん中にいる金剛が前に進み出て、高雄に声をかけた。多くの金剛たちには番号付けが下げられ、胸には名札がぶら下がっている――九の文字付けがあった。

「ただいま戻りました」
 高雄はつとめて事務的に、何の感情も出ないよう努力して、布でくるんだ遺物を差し出した。震える手でそれを手にした金剛が、それが家族のものであるかのように頬ずりする。そのまま彼女は泣きだしてしまうかと思われたが、他の金剛たちが揃って肩を寄せたり、遺品を取り囲み始めたので、その金剛は感情を抑えられたようだった。打ち寄せる波のかすかな音だけが場に反響して、いたたまれなくなる。提督はこの場にはいなかった――艦娘の葬儀になど参列する意味もないということか。高雄は唇を噛みしめる。

「あの、金剛さん、電が、」
 震える口調で、桟橋から上がっていた電が口にした。
「ご、ごめんなさい!」と電は頭を下げる。

「電たちがモタモタしてたから、金剛さんを助けられなかったのです! もっと早く、たくさん撃って、深海棲艦に当てていれば――」
 そこで電は自身の感情に耐え切れなくなり、最上が肩を抱いた。わあわあ泣き始めた電の前に、一人の金剛が進み出た。その金剛の表情は、他と異なっていた。

「NoNo電ちゃん、それは電ちゃんとか、他の艦娘の責任じゃないネー」
 その金剛は飄々と、まるで部下の失敗でも嘲るかのように、鼻を鳴らして沈んだ金剛の遺物に振り返った。多数の金剛たちが、彼女を信じられないという目で見つめはじめる。

「だいたい、あれしきの砲撃で沈む私も私デース、真の戦艦ならこう……バシッと! やらなきゃネ! Hit! Hit! Hit!」
 身振り手振りを交えて表現する金剛の姿は平常の彼女そのままで、かえってそれが葬儀場のようなこの場所の異質さを意識させる。

「あなた、ちょっと落ち着くネ、仲間が死んだってのに、」
 一人の金剛が肩に手をかけようとして振り払われた。

「Shut up! まったくだらしないったらありゃしないヨ! どーせ大丈夫だと油断してたんでショ! 慢心慢心!」
 金剛たちの顔が青ざめていく。同時に何人かの金剛が、怒気を露わにそのその《うるさい金剛》に詰め寄る。

「Kongou……you're、」
 一人の金剛が英語で《うるさい金剛》にまくしたて始める。《うるさい金剛》はそれに全く耳を貸さず、「他のみんなにも分かるよう言いなサーイ、だいたい実力不足ですよ、よ・わ・い!」
 私ならもっとうまくやれるネーとうそぶいた彼女にとうとう別の金剛が掴みかかった。同じ顔同士が、同じ服を着た者同士が爪を立てひっかき合う喧嘩を見るのは高雄は初めてだったが、良い眺めではなかった。轟沈した金剛の前で行う事としては、あまりにも、あまりにも醜すぎた。服を掴んで揺さぶり、悪罵を吐き合い、それを見る艦娘たちが……電たちが、悄然とした面持ちになっていく。高雄は息を吸い、叫んだ。
 
「やめなさいッ!!」
 他の金剛たちが動きを止めて高雄を見やる。電も最上も、他の艦娘も見た。高雄は意識して険しい顔を作り、遺品の髪飾りを持つ金剛に歩み寄ると、すばやく遺物を奪いとった。一体何ヲ、と口にする金剛に高雄は付け足した。

「一旦、この遺品はこちらで預かります……頭が落ち着いたら、あなたたちの中から一人、代表者を募って、取りに来て下さい。だから……轟沈した艦娘の前で、そんな喧嘩……しないでちょうだい」
 低い高雄の声に金剛たちは居心地悪く互いに見交わし、発端となった《うるさい金剛》は掴まれていた服を整えながら周りを睥睨している。

「それから、そこの……金剛さん」
 高雄は《うるさい金剛》を指す。彼女はまさか自分がという顔をしたが、流石にここは周りの目を意識してか、とりあえず頷いた。まったく反省というか、沈痛らしき表情は見えない。よほど戦意が高いのか、それとも周りから浮いているのか。
「一緒に私の執務室に来てください。お話があります……さあ、これで終わりです。出撃していた艦娘は補給してから、提督に報告する事、金剛さんたちは……ここで解散です。各々、よろしくお願いします」と締めくくった。出港口に張り詰めていた雰囲気が流れだし、他の艦娘たちが散っていく。

 そして高雄が手招きすると、《うるさい金剛》は他の金剛たちの集団から離れ、渋々と彼女についてきた。



 この鎮守府には現在五十二隻の金剛型一番艦が属している。他の鎮守府に比べて戦果や装備の面で振るっていなかったこの鎮守府が持つ、ほぼ唯一とも、異様そのものの特色と言っても良かった。

 資材利用による艦娘建造、そして敵艦撃沈後に回収された建材によって作られた艦娘や、他の鎮守府からやってきて定住するようになった艦娘たち。その中でこの鎮守府だけは、異常なほど金剛の数が多い。彼女らには特別の寄宿舎(彼女らは《金剛宿舎》と呼んで不満を露わにする)が用意されているが、そもそも戦艦用の装備が行き渡るほど良い環境ではないので、多くの金剛たちは幾つかの砲を使い回ししている。訓練もなおざりであるため、彼女らは運動不足の動物が抱えるように、苛立ちをあらわにしている。どうしてここまで金剛の数が多いのか、そして現在も、どうして建造すると半分以上の確率で金剛型一番艦が出来上がるのか――そもそもレシピを注入して艦娘を作るというプロセス自体が、工廠の人員にとっても未解明であるため、こうした疑問は決して解決されることのない難問として常に机上に上げられていた。他地域から、深海棲艦を警戒して護衛随伴でやってきた研究者たちにも、お手上げの事案であった。この鎮守府にそういう磁場があるという説やレシピ、地域の特殊性から、果ては提督と金剛の相性が良い、などどうでもいい論まで飛び出す始末である。近隣海域全ての金剛がこの鎮守府に集まっていると言っても過言でなく、周囲の鎮守府に金剛を派遣(むろんその分の資材と交換である)してもなお、その数は余った。余り過ぎた。

 余りすぎる戦艦の数、そして浪費される資材や居住スペース難。駆逐艦や軽巡に比して、あまりにも戦艦が必要とする資源は多すぎた。当初は軽巡や重巡の砲を金剛らに装備させて出撃させる事や、半ば強制的な解体なども試みられていたが、全てが功を奏さなかった。そして当代鎮守府の提督は――他鎮守府で采配が振るわないと、左遷されたに等しい提督は、提案した。

 金剛型戦艦を囮にして深海棲艦ら多数の敵艦をおびき寄せ、一網打尽にする。

 戦艦一つを生き餌にすることで多くの国敵を撃滅すれば、それは国家奉公へと繋がり、ひるがえって戦果をもたらした我々に恩寵をもたらす、という論理である。使える者は親でも使う、戦艦らを無駄に余らせるよりも、爆弾のように用いることで戦況をより有利に進められる、と提督は口にした。犠牲になる相手が提督や技術者のように人間であれば、いの一番に却下される作戦である――が、相手が《艦娘》であるならば話は別であった。彼女らはもともと人間であったが、艦娘になった時点で人間とは別種の存在とみなされる。高雄などは志願して艦娘になったクチであり、己が人間の道具としても用いられることに同意する文章も書かされた。位置づけとしては非常に高価な軍用犬とでも言った扱いであり、彼女らの無駄な浪費には器物損害や資材浪費などの罪状があてはまることはあっても、それ以上はない。たとえ死んだとしても人間並の悼みがあるわけではない。ヒトガタの兵器として深海棲艦らとの戦いを義務付けられた彼女らは――多くが実際にそれを望んだのであるが――鎮守府の道具となり、使われる運命が待っている。

 それらを考えると高雄は毎度のことながらため息をつかざるをえないが、他の艦娘たちはそれぞれ異なることを考えているようだ。後ろにいる金剛――数字付けとしては、四十七番金剛という扱いだ――など、その最たるものだろう。その《うるさい金剛》は、何やら不満らしき物をぶつぶつ言いながら歩いている。高雄は秘書艦専用の部屋まで金剛を案内すると、彼女を部屋に入れた。

「私、さっきの事は反省しまセーン、する気もないデース、間違いじゃないと思ってマース」
 金剛はぶうぶう言いながら勝手に秘書艦机に腰掛けようとするので、高雄が押しやった。そしてため息をつき、「そういうつもりで来させた訳じゃありません」

「ワッツ?」と言う金剛に高雄は机から命令書を取り出し、突きつける。作戦計画書でもあるそれを金剛はしげしげと眺め……そして目が喜びに輝いた。

「これ、次の作戦……私が出撃できるじゃないですカ!」
 金剛が用紙を奪い取り、枠内に文字がぎゅうぎゅうに押し込まれたその書類を上から下までじっくりと眺める。その様は玩具をもらった子どものようで、高雄は苦笑いしてしまう。

「そうです。作戦発動は三日後……再度、強力な深海棲艦が棲むと言われる海域に出撃し、多くの戦果を上げよ……とのことです。ちなみに金剛さん、その作戦、私も随伴しますからね」
 その言葉に金剛は口を尖らせた。さっきの件のせいで、高雄が好きでなくなったらしい。が、不満を言いたいのは高雄も同様だった。というより、これほどの金剛を相手に、どう接して良いのか未だに決めかねているというのが本心だった。艦娘たちの多くも同じ心情だろう。

「別に高雄さんがいなくても、私だけで大丈夫デース! きちんと演習もして、練度も上達させますから……私は、生きて帰りマース!」
 胸を叩いて豪語する金剛。高雄は金剛に目をやり、どう返すべきか迷った。そもそも現在の鎮守府では、金剛型の価値は箱の中にダイヤが溢れかえるが如き状態となっており、非常に低い。戦艦自体が軽んじられる風潮であり、かえって空母や潜水艦を重んじる傾向もあった。……つまり、殆どの金剛は、これから《捨て艦》される事となる。

 捨て艦。

 艦娘たちも女の子だ。集まるとすぐに噂話がはじまる。誰それが仲が良い、誰それはこの間ヘマをしでかした。何々は間宮さんとのツテを持っている……そして次に上がるのが、たいてい金剛に関するものだ。これからどれくらい金剛が増えるのか。もし増えたら自分たちが圧迫されるんじゃないか。訓練ばかりで出撃できなくなるんじゃ。むしろ誰か沈めば装備は回してもらえるのか……などなど。その話の中でいつしか醸成されていったのが、《捨て艦》。囮、生き餌、そうともとれる戦法は、確かな犠牲と確かな戦果を後に残す、この鎮守府特有の現象だった。同型艦が多い駆逐艦でも軽巡でもなく、よりによって戦艦が。他の鎮守府から見れば泡を吹きそうな光景だが、それが常識としてまかり通るのがこの場所だ。問題視する意見も提督に届けられているのだが、大抵は彼によって握り潰されている。倫理ディレンマや内地の人権団体などの問題から渋る上層部を説得したのは提督だ。彼がこの特攻作戦の全てを司っていると言っても過言ではない。

「高雄サン?」
 考え事をしていたらしく、目の前で金剛が手を振っている。彼女はつとめて意識を現実に戻そうと努力し、「以上です。それでは三日後の○七○○に出発です。集合は○六三○、執務室になります。装備、艤装は適宜整えておいてください、以上です」遺品は他の金剛に取りにこさせてください、と高雄が口にすると、金剛は頷いた。

「ヨロシクオネガイシマース!」

《うるさい金剛》は意気揚々と部屋を出ていき、高雄は、改めてため息をついて、机の中に仕舞われていた書類を取り出し、執務を始めた。出撃していたために補給も必要不可欠であったが、まずは秘書艦としてすることをある程度こなさなければならなかった。そして書類を手に提督と面会する事を考えると、より一層憂鬱になった。



「……他の子たちの報告と合わせ、以上が戦果報告です。よろしいでしょうか」
 とうに日が暮れた執務室には電灯の明かりがともり、金属製の光を下に投げかけている。簡素な執務机に腰掛けた提督は高雄の報告を読み、頷いた。机には高雄が淹れたコーヒーが置かれている。彼は一口すすった。

「分かった。これは受領しよう」と提督は書類にサインし、認可用の印を押した。一息ついた高雄であったが、まだ提督の傍を離れるわけにはいかなかった。

「……どうした?」とコーヒーを傾けていた提督が見やる。他の書類に取り掛かろうと思っていたらしい目が、訝しげに高雄に寄せられた。その目に一瞬、気圧されそうになった高雄は、意を決して口を開いた。

「……金剛型一番艦の、処遇についてですが」
 高雄が言うなり、提督はまたか、という表情になった。高雄自身も自分にうんざりするほど、これについて諫言しているのは理解している。提督は苛立ちを隠さない表情で彼女を見上げる……いつからこんな関係になったのだろう、と高雄は自問する。当初は彼女も提督を素敵な人だ、と思っていた。きちんと作戦を取りまとめ、艦娘たちを導いてくれると思っていた。今彼は、自分が育てた作戦をけなされる事に怒りを覚えながら彼女を見やっている。金剛を使い潰す戦術を。

「前にも伝えただろう。……我が鎮守府は金剛型一番艦を用いて多くの戦果を上げることに務める。それが艦娘を統率する鎮守府の志……違うか?」
 提督が手を組んで言う。戦理としては正しい。戦果を上げる事こそが全てであり、敵を撃破すれば勝てるのが戦争だ。だが高雄は、なぜか頷けなかった。

「それはよく存じています。ですが……あそこまで露骨に、我が隊の艦娘を囮に使うのは、如何なものかと」
 高雄が言うが、提督は既に話の先を知ったような顔で机を指先で叩く。コツコツという音が、ずいぶんと耳に障る。彼との議論もずいぶん行っていた。提督もそれなりに追い詰められた状況であった事を、高雄は知らないわけではない。以前も彼は、装備や施設が整っていない鎮守府で戦っていたようであるし、そこで艦娘らを相手取って指揮を行っていた。だが艦娘らとの相性が悪かったのか、あるいは彼の指揮が良くなかったのか……どこかで彼は作戦を失敗し、鎮守府に大きな損害を与え……こちらに回されたと聞く。噂では、艦娘らによる作戦が失敗したため、鬱憤晴らしでもするかのように、いよいよもって彼女たちを道具扱いするようになったと聞く。そうして新しく回されてきたこの戦場で、提督がどれほど神経を削りながらこの戦術を推し進めなければならなかったか、秘書艦である高雄が知らない道理はない。

「仕方あるまい、それしかないのだ」
 提督はうんざりした声で返す。「この鎮守府が他に誇れるものは何がある? 規律? 開発? 艦娘の練度? 足りん、全然足りん。そもそも新設されたばかりのこの鎮守府が、他の鎮守府に劣らずの戦果を上げるには、これがもっとも効率的だ。他の海域からは遠く、燃料がかさむ。交通の便も悪く弾薬や資材も届きにくい。だから研究者も来ることが難しく、開発も難しい。加えて異常発生的に金剛型一番艦ばかり増え続ける。誰にもその理由はわからん。とにかく増殖するのだ。それともなにか、戦艦ばかりの艦隊を率いて、戦果の代わりに貴重な資材を馬鹿食いさせろと――」

「そういうことを申しているのではありません」
 大きな声ではなかったが、己の体から発せられた険悪声に高雄は自分でも驚いた。提督はそれを怒声であるかのように腕組みしながら聞いている。こんな環境で良い議論などできるはずがない――そう思いながら高雄は、口が動くのを止められない。
「私の目には艦娘を、あの子たちを使い潰しているようにしか、完全に道具扱いしているとしか、思えないのです。それで艦娘たちは、ついてくるとお思いですか? みすみす仲間を自滅させておいて、私達が納得できると、お思いですか……?」
 声に怒気をねじこみながら高雄は、ああやってしまった、と心の隅で嘆息した。秘書艦が堂々と上司である提督に食って掛かっているのだ。どう見たって秘書艦として機能を果たしているとは思えない。下手すれば即刻解任だ。

「忠告、痛み入るね」
 提督は立ち上がり、帽子の形を整えながら、机を周って高雄の傍に来る。彼女はただ立ち尽くし、提督を待っていた。
「では尋ねようか。現状の施設で、装備で、状況で……これに依らずして、戦える良い戦略があるかどうか。艦娘たちと仲良しこよしで過ごしながら、敵を壊滅させられる戦術があるか」

 高雄は口をつぐんだままだ。自分でもわかっている。この鎮守府にいる限り、金剛たちが増殖し続ける限り、他に手はないのだろう、と。しばらく黙っていると、提督が口を開いた。

「これが最善なのだ。我々の、鎮守府のこれからを考えれば、これしか生き残る道はないのだ。分かるか」
 生き残るのではなく、戦果を上げたいだけでしょう、とは口にできなかった。
「深海棲艦と戦う、艦娘たちを扱う――全て大事な事だ。だがこの鎮守府を他鎮守府から守りぬくには、存続させるには……戦いづつけるしかない。それが何を意味しようが、持ちうる限りの戦力を使い抜くしかないのだ……! それが分かるか!」
 提督が最後に一声吼え、机を叩いた。コーヒーが揺れて波を作る。高雄は彼の心情を、彼自身もギリギリの糸を渡っている状況を斟酌しようとして……やめた。それで誰が救われるのか。

「私の考えは以上だ。――高雄、これが最善なのだ。次善などない。どうか、わかってほしい」
 提督は高雄の肩に手を置いた。彼女は振り払おうと思ったが――それはできない。

 艦娘らが提督などの人間に接触するには、ルールがある。

 一、艦娘は人間に危害を加える事ができない。間接的であれ直接的であれ、最終的に人に害が加わる行為を行うことができない。

 ニ、艦娘は人間の許可がなければ、触れることができない。だが人間は艦娘に自由に触れることができる。

 三、艦娘は人間の命令を至上の物とし、それが自滅的な作戦であっても、幾段階のプロトコルを経た命令であれば従属する。そうでない場合には反駁の余地が残されている。

 こうした条件付け――まるで犬につける首輪だ――などが、多くの非常事態や倫理的ジレンマを基にしたシチュエーション別の行動もインプットした上で、艦娘らには組み込まれている。主にプログラムは工廠で行われるが、艦娘たちの意思で、あるいは上の人間の采配によって、ある程度カスタムすることは可能といわれている。これらの条件があるため、金剛も高雄も、自分の意志で提督に触れたことがない。金剛は隙あらば飛びかかって抱きつく素振りを見せているが、実際にそれをすれば脳細胞が焼き切れる激痛が彼女を襲うため、あくまでフリである。それほどの愛情を自分は持っている、という誇張表現なのだ。要するに、人間の道具となった艦娘は、人間らの思いのまま、ということだ。所詮は軍用犬なのだろう。

「……善処します」と高雄は肺から空気を絞り出すように口にした。そして書類を机の上に置くと、「退出してよろしいですか」

「ああ、行っていい」
 ひらひらと手を振りながら提督が口にする。高雄は一礼すると執務室を出て、歩きながら深呼吸をした。……何度やっても、気分は晴れなかった。自分が、偽善者だという気がした。胸が疼いて、嫌な感覚が全身を駆け巡った。口にすれば金剛金剛――彼女たちの捨て艦戦法に対して提督に猛省を促すとは言え、それは真意ではない。

 つまるところ、それがいつ自分の身にふりかかるか分からないのが、怖いのだ。

 もし大量生産されているのが金剛でなく、高雄だとしたら。

 あるいは他の艦娘だとしたら。

 そうなれば、使い捨ては自分だったということもあり得るし、つまり轟沈の憂き目にあうのは高雄本人なのだ。他の艦娘たちも心情は似通っているらしく、耳に入る怪談には、もし自分が大量生産されていたら――という、くだらなく、そして不謹慎な内容も含まれている。こんなこと、艦娘になる前までは考えたこともなかった。そして敵艦殲滅を最終目標として鎮守府にやってきた金剛たちの脳裏にも、やってきたことはなかっただろう。

 考えていると気が滅入りそうだったから、高雄は足をキッチンの方に向けた。このまま秘書艦付属の寝室で横になっているより、食堂でコーヒーの一杯でも飲もうと思ったのだ。もう夕食の時間帯はずいぶんと過ぎたが、秘書艦名目でねじこめば大丈夫かもしれない。

 そうした矢先、木張りの廊下を誰かが歩いてきた。青い服、高雄と同じ青い帽子で大きな胸部装甲、あれは――

「あら高雄、お仕事は終わり?」と声をかけたのは、高雄型二番艦の愛宕だった。



 鎮守府備え付けの食堂は艦娘全てを収容できるだけあって、やはり広大だ。既に火は落ちていたが、高雄は火を沸かし、コーヒーを入れていく。愛宕はがらんと空いたテーブルでニコニコ顔を浮かべながら高雄を待っている。何がそんなに嬉しいのかと黒い液体を注ぎながら高雄は思ったが、そう考えること自体、自分が苛立っていることの証拠なのだろう。カップ二つを愛宕の所に持って行き、対面に腰掛けた。疲れていたので高雄は砂糖を二つ、愛宕はミルクのみ。「ありがとう」と口にした彼女の声はなんだか密やかで艶やかさみたいなものがあり、それに高雄はいつも背筋をくすぐられる。同じ型の一番二番で、どうしてこうも差異が出るのだろう。自分も提督に猫なで声を発するだけの器量があれば、もしかしたらここまで彼との関係は悪化しなかったかもしれない。

 暫く無言でコーヒーを啜っていた。特に何を話そうというわけでもなかったが、流れでこうなっていた。壁には『百戦百勝』『夜戦主義』と立派なお題目の書き初めがかけられているが、あれらは全て金剛たちが書いたものだ。彼女らは不思議なほど物を作りたがる。特に捨て艦戦法が始まってからはその風潮が加速した。あの書き初めの他にも、各部屋に一つずつ置かれているぬいぐるみや油絵らしきものも、全て金剛たちの自作だ。どうせ沈むなら、何か作ってからにしたいのかな――そこまで考えた高雄を、いつのまにか愛宕が見つめていた。

「また、金剛ちゃんたちの事?」

 また、と呼ばれるまで自分は何度そのことに言及したのだろう。そう思いながら高雄は「そうね」と返した。

「今日も提督に進言したわ。いつまでこれを続けるのか、本当にこのままでいいのか……結果は、梨の礫だったけど。これで解任されないのが不思議なくらい」
 高雄はコーヒーを啜る。愛宕は薄く笑い、コーヒーを口にした。黒い液体が喉に染み入って、苦さと旨みを高雄に教えてくれる。この感覚は、艦娘だけのものだろうか。それとも人間と変わらないのだろうか。

「もしかしたら、自分が間違っているのかも……って、提督も考えているのかもしれないわね。彼だって人間だもの、あれこれ悩んだりするわ。それで、いつも叱ってくれる高雄を横に置きたいのかも」
 愛宕がコーヒーを揺らしながら口にする。愛宕は人の心を推し量るのが上手で、そこも自分とは違う。そう考えると、少しは気が楽になってきた。

「ねえ愛宕、あなた……自分が人間より下だって、考えた事ある?」
 高雄が問うと愛宕は苦笑し、「すごい質問するのね」と返した。

「私は、あんまりそう思わないわ。たまに街に出る時は艤装は外すし、そうすれば他の人とも見分けがつかないし……ここにいれば、艦娘として活躍できるしね。もちろん提督や他の人の命令には基本的に服従だけど、それはそれで、嫌いじゃないかな」
 愛宕は両手でコーヒーカップを持った。ふうふうと口にする姿は、どことなく子供っぽくもあり、ふわふわした感じもあり、魅力的なように高雄には思えた。かわいいと綺麗の中間にいるような愛宕は見ていて飽きないし、こうして話をしていても楽しい。もし高雄が男だったら、愛宕に惚れるのかなあ……と思っていると、「あなたこそどうなの?」と彼女が高雄に返した。

「私は……たまにあるかな。秘書艦をしてる時とか、工廠で他の作業員とかと作業してる時とか。たまに、ああ自分は人間じゃないんだなあって、艦娘ってこんなものなのかな、って思ったりする。技術者たちも、秘書だからある程度便宜ははかってくれるけれど……けれど、検査や改修を受ける時は、なんだか落ち込んじゃう。慣れないヘッドギアを被らされて、外していいと言われるまで指一本動かせない……自分がPCのパーツにでもなったみたい。まあ、楽しいことも、あるけどね」
 高雄はずいぶん久しぶりと思える笑顔を愛宕に浮かべた。ぎこちないものだったが、彼女もそれに応えてくれて、高雄はなんとなく嬉しくなった。これだけでも、一緒にコーヒーを飲んだ価値はあったかもしれない。尖っていた心の表面が滑らかになっていく。

「あんまり、金剛ちゃんたちの事、気に病まない方が良いわよ」
 愛宕が言った。釘を刺すというより、相方が危ない道に行かないよう注意してくれてる言い方だった。
「あの子たちはあの子たちで考えてる事があるんだから。私達が変に深入りして良いものじゃないし……部外者の私達には分からない事もあると思う」
 愛宕はコーヒーを飲み干した。直に高雄もコーヒーを干す。疲れは多少なりとも薄まった気がするが、このまま部屋に行くのがはばかられて、もう一つ飲みたかった。なので愛宕に「もう一杯、どう?」と尋ねてみると、彼女はクスリと笑って「いつもそうね」と言った。

「いつもって?」

「あなた、辛くなると私と一緒にいようとするじゃない。適性試験の時だって、はじめて秘書艦に抜擢された時だってそうよ。前からの癖ね、それ。でも良いわ、お願い」
 了解と返した高雄は立ち上がり、コーヒーポットに近寄った……所で、食堂の入り口に人が立っている事を知った。明かりの影で分かりにくかったが、高雄の目に気づいたその人物は慌てて方向転換しようとして高雄に呼び止められた。

「って……金剛、じゃない」
 高雄は目をキョトンとさせて言った。しかも数字付けは四十七番、あの《うるさい金剛》だ。金剛はややモジモジしていたが、気づいたらしい愛宕がどうぞと声をかけると、しぶしぶ入ってきた。

「まさか先客がいるとは……予想外デース」目の前に運ばれてきたコーヒーを仕方なさそうに飲みながら金剛が言う。最初彼女は英国式のティーを欲しがっていたが、こんな夜中に何を言ってるのと高雄に一蹴された。そもそも僻地にあるこの鎮守府にそんな設備は無い。

「でもどうしてこんな夜中に? 週番とかが見まわっていると思うけど」
 そう口にした高雄は、どうして愛宕もまた出歩いているのかわからないことに気づいたが、それはそれとして金剛に尋ねた。金剛はしばらくためらっていたが、愛宕と高雄の目に晒され、言いたくなさそうに口にした。
「個人演習のために、海を開けてもらっていました……もう夜中なので提督に直接許可もらって、書類は高雄サンの部屋に突っ込んで置きました、デース」
 口調がはっきりしないが、おそらく高雄の頭越しに行動したことに引け目があったのだろう、と高雄は思った。自分もいつでも対応できる立場ではないので、そこまで気を遣わなくても良いのに。

「ずっとやっていたらお腹が空いてきたので、何か夜食をつまもうと思ってこっちに来ましたデース。一人でのんびり食べようと思ってたノニー……」
 じろりとした目で金剛が高雄を見る。高雄だけなら嫌ならば帰っても良いと悪しざまに言ってしまったかもしれないが、そこに愛宕が割って入った。

「ということは金剛ちゃん、今度、出撃することになったの?」
 愛宕が問いかけると、金剛はコクコク頷いた。愛宕はおめでとう、と小さく拍手しながら口にするが、高雄の気分は晴れない。茶色い液体に口をつけるが、今度は思ったよりもスッキリしなかった。

「愛宕サンも見ててくだサーイ! 私、ものすごーく活躍して、ものすごーくたくさん敵艦をやっつけて、提督に認めてもらうのデース! 迫り来る深海棲艦をちぎっては投げ、ちぎっては投げ……そうすれば、他の金剛たちの鼻を明かすことだってできマース! 他の艦の中でも際立って大活躍の七面六臂! 天王山デース!」
 微妙にズレた事を言いながら金剛がニッコリした。
「愛宕さんは今回の作戦、参加されまスカ?」

「私は……今回も居残りかなあ」
 金髪の毛をくるくると弄びながら愛宕が言った。
「最近はあまり出撃する暇がなくて、困っちゃうわね、もう」

「そんなに忙しい用事、あったかしら?」
 高雄が口にする。そういえば愛宕は最近作戦には出ていないようだが、かと言って秘書艦のようにあれこれ雑事に走っている様子もない。強いて言えば、提督の部屋にたまに出入りしている所は見るが、それくらいだ。気になった高雄だが、愛宕がうつむき加減になり、なんだかこの話自体を嫌がっている雰囲気なので、方向性を変えることにした。愛宕には愛宕で、金剛とは違って突っ込まれたくない所があるんだろう。高雄だって、たまに秘書艦名目でお酒を取り寄せたり、没収した嗜好品に内緒で手をつけることがある。誰にだってそういう一面はある。

「金剛は、提督の事を本当に慕ってるのね」
 高雄は言う。彼を慕うという感情は、今の高雄には最も縁遠い感情であるが、「そうですヨー!」と金剛はとびきりの笑顔で返した。

「あのキリリと引き締まった顔つきに、詰め襟の制服の格好良さ、それに作戦を命じる時の凛々しさ……ヴァーニングゥ・ラーヴゥ!」
 まさに《うるさい金剛》と名づけた通りの賑やかさで、金剛が立ち上がるとポーズを取る。頬が紅潮しているのを見ると、あながち冗談でもないらしい。これも条件付けの成果という奴なのだろうか。そう思った所で、またろくでもないことを考えたと高雄は内心うんざりした。

 しかし、なおも目の前で提督の魅力について熱弁する金剛を見ていると、心のどこかから笑みが浮かんでくるのを感じた。それを表に出してみると、目の前の愛宕もやはりクスリと笑ってくれた。静かな食堂に金剛の賑やかしい声が響き渡るが、今日は運が良いのか週番がやってくることもない。悩みが泥のように溜まっていた高雄にとって、それは何より嬉しいことだ。一秒でも長く、目の前だけに集中していられるから。

 提督の魅力、そして自分の前途について誇らしげに語る金剛。

 高雄を知り、さりげなく金剛を気遣ってくれる愛宕。

 二人の艦娘がいることが、こんなに心を癒してくれる事だとは知らなかった。高雄はコーヒーを飲んで、嬉しさを声に出してみることにした。

 ――二人といると、本当に、楽しい。

 この夜は、そうした事を体現した時間帯そのものであった。



 思ったより早く目が覚めてしまった事に気づいたのは、枕元の時計を見た時だった。ローマ数字に装飾された時計は○四○○を意味している。きちんと支度するには時間が結構かかるが、この時間は明らかに早い。寝直そうかと思った高雄だが、薄く開いたカーテンから差す日が目に入り、なんだか寝ていられなくなって起床することにした。秘書艦はやはり待遇が良く、個室に洗面所やトイレまでついている。戦闘に赴くのでそれほど丁寧な身支度は必要ではないが、何より艤装のチェックに時間がかかる。制服を着込んだ彼女は工廠へと向かい、作業員たちに艤装の再点検をしてもらった。朝早くではあったが、技術場には白衣の人びとや作業着を着込んだ人がちらほら見受けられる。

「完了しました。チェックお願いします」

「はい」
 高雄は艤装を受け取り、それを体に身につけた。砲塔も自在に動き、機銃も稼働する。魚雷の方にも問題はなさそうだ。作業員たちは艦娘がチェックしている様子が物珍しいのか、何人か立ち止まってこちらを注視している。発射可能な武器が艦娘の手に握られているが、一人もそれを不安がることはない――条件付けは全ての人間にあてはまる。たとえここで高雄が発狂して砲塔を辺りに向けたとしても、艤装に取り付けられた装置が行動を一秒以内に抑えるだろう。

 礼をして工廠を退出すると、時間はさりげなく迫っていることに気づく。防水防圧加工の腕時計を確認した高雄は、足を早めて執務室へと向かった。

 執務室までやってくると、その前でバッタリ《うるさい金剛》と出くわした。彼女はちょうど執務室から出てきた所らしく、高雄はそれを見て足を早めた。ずいぶん早い。

「金剛、早いのね」と高雄が声をかける。しかし扉を閉めた金剛は、何か心ここにあらず、という調子でそこに突っ立ったままで、身動ぎ一つしない。いつもの彼女からは似ても似つかない姿で、高雄は不思議がった。
「金剛?」
 しかし返事はない。

 業を煮やした高雄が《うるさい金剛》の腕をつかむと、「auh!」と金剛が強い勢いで腕を振り払った。キョトンとする高雄の前で彼女は「ああ……高雄さん、早い、ですネ」

「ちょっと提督と事前の打ち合わせをしようと思ったけど……どうしたの、顔色悪いけど。もしかして風邪?」
 額に手を当てようとする高雄の手を、やんわりと《うるさい金剛》が押しとどめる。そのまま彼女は、何事かぶつぶつと呟きながら、高雄が来た方向へと、工廠の方へと足を向けた。

「金剛、どうしたの?」

「ah……艤装の再点検、してくるネ! 時間には間に合わせるから、待っててくだサーイ!」
 金剛が慌てたように走って行くのを、憮然とした面持ちで見つめる高雄。さっぱり事情が飲み込めなかったが、仕方ないと思って執務室の扉をノックした。中に入ると、やはりいつものように提督は執務中であった。これから作戦が始まるのだから、そうした準備や、後始末についての準備も進めているのだろう。山ほどの書類とファイルたち。それなりに彼も眠っている事は聞き及んでいるが、それでも目の下の隈は見えてしまう。

「先ほど、金剛と何か打ち合わせをされたんですか?」
 高雄が聞くと、提督は顎鬚らしきものをごしごし擦りながら「戦艦の心得について教授していた」と口にした。

「心得……ですか」
 捨て艦という言葉がまた頭に浮かんだ高雄は、それ以上追求せずに提督と打ち合わせを開始した。ここで高雄が非難しても、また泥仕合が展開されるだけだ。

 事前の補給作業から出港後のルート予定……予測される敵の規模……そして会敵の場合の行動規則――それはつまり、金剛を先んじて行動させることを意味していた。また今度の出撃は長丁場になる事も、高雄は改めて提督から知らされた。これまでは鎮守府周辺の深海棲艦を撃滅するので手一杯であったのだが、度重なる戦果と功績により、鎮守府へと敵深海棲艦主力の撃滅要請が舞い込んできたのである。場所は江ノ島付近であって強力な深海棲艦らの存在が確認されており、他の鎮守府でも手を焼いていた案件であった。つまりこの作戦に成功すれば鎮守府の評判は大きく上がり、他との競争に引けをとらないようになる、とも言えた。提督が鼻息荒く作戦の重要性――捨て艦戦法――を力説するのも尤もであったが、高雄の心中は穏やかではなかった。彼女は二度ほど途中で作戦の変更をやんわりと訴えでたのだが、言下に退けられた。既に提督の目は上げられる敵の首級と、上層部から評価を受ける事への誉れしかない。

 やがて扉が開き、出撃予定の艦娘たち――金剛、赤城と飛龍の空母二隻(この鎮守府が有する空母はこの二人だけだ)、航巡最上、重巡利根、そして高雄が勢揃いする。彼女たちの前に高雄が歩み出て、ミーティングを行った。そして作戦概要から具体的な作戦の中身――最終的には金剛による単艦で敵の攻撃を引きつけ、残りの艦娘らの斉射によって敵を全滅させる――も話された。《うるさい金剛》と高雄の中で名付けられた金剛は一言も反駁せず、黙って話を聞いていた。工廠で再点検を受けたという彼女の艤装が、わずかに軋んで揺れた。他の艦娘もそのままであった。説明しつつも高雄の気持ちは提督とは真逆を向いていたが、作戦を否と断定する事は条件付けによって許されない。よって高雄は最終的な打ち合わせを終え、他の艦娘たちが退出した後も、提督と作戦後の事後処理について話し合ったが、その間に二者の間に交わされたやりとりは、事務的なものを除いてほぼ無と言ってよかった。既にして溝が埋めがたいものであれば、何を話しても無駄であり、会話もまた単なる発声にすぎないことを、彼女はよく承知していた。心に一つの考えを注意深く仕舞いこみながら、高雄は提督と打ち合わせを終えた。

 やがて出港時刻。他の艦娘らを従えた高雄が、《うるさい金剛》と共に桟橋を下り、海中に降り立つ。靴型の主機は順調に稼働し、彼女らの体は海面スレスレを浮き上がる。帽振れ、進軍ラッパが見送る艦娘たち、見送られる艦娘たちを彩る。ある意味で結果が分かりきっている戦闘に送り出される艦娘たちの手は、波止場に向けて振り返された。金剛も同じく手を振っていた。その手は、他の艦娘たちと同じ手に見えて、高雄は胸が痛んだが、すぐに海原へと目が向けられた。


 出港して七時間、日がだんだんに落ち始める頃合いであった。既に深海棲艦らの領域に入り込んだ六隻の艦娘たちは、これまで二戦をこなしていた。敵水上艦隊と水雷戦隊らとの戦闘であったが、どちらも空母による先制攻撃が功を奏してうまく勝利を収めた。損害も殆どなく、完全勝利と言って良かった。他鎮守府からのデータによれば、そろそろ敵主力も近いはずである。高雄の心臓が音を立て始める。他の艦娘らのコンディションも気になったが、それより心配なのは、先ほどから船速を早くして先んじている金剛の存在であった。周囲には静けさを整えた海が果てもなく広がっていて、六人の少女たちを無差別に照らしている。かもめの声も聞こえない。

「金剛、もう少しゆっくり……このままだと、援護できないわ」

「その必要は……ないデス。私一人で、敵を全部片付けマース! 私が敵主力を全部撃破して……提督の、役に立ちマス!」
 金剛の声に震えが混じっているのが分かる。高雄はつとめて深呼吸し、金剛の意思に負けじと声を張り上げる。

「いえ、その必要は……ありません。みんな! ちょっと聞いてちょうだい!」
 高雄は自身に取り付けられた無線スイッチをオフにした。これで母港にこの話を聞かれる心配はない。旗艦のするべき事ではないが、みんな分かってくれるはずだ。赤城、飛龍、最上に利根が集まる。明らかに何かを含んだ高雄の行動に、全員の表情は深刻そのものだ。金剛も動きを止めた仲間たちと進行方向とを見比べ、しぶしぶ戻ってくる。

「これまでの作戦は、金剛型一番艦を先行させ、私達は遠距離待機、後に集結した敵艦隊を砲雷撃戦と攻撃機らによって撃滅する事でした。ここに、私独断での作戦追加を提議します」
 全員がざわついた。静かに、と高雄が叫ぶ。命令プロトコル違反。激痛と鈍痛が胃の底からせり上がり、頭が割れんばかりに痛みを発する。だがこれは高雄だけのものだ。今の所は。だが実際に行動を起こそうとすれば、抑止力としての激痛が高雄を襲うだろう。

「金剛が会敵した場合、私達も突撃して金剛さんと共に戦闘を開始します。赤城さん、飛龍さんは遠距離から援護をお願いします。私達の目標は遭遇した敵主力の撃滅、そして、金剛を無事に鎮守府へと連れて帰る事です」
 言い切った瞬間、意識が断絶しそうな程の吐き気が突き上げてきた。これは違反ではなく、作戦の追加である。根本からの変更ではない――そうした気休め程度のプロトコル変更を必死に入力しながら、高雄は海面に嘔吐する。その背中を最上が擦りながら、

「僕もそれに賛成。もう仲間を見捨てるのは……ゴメンだしね」
 彼女の中の条件付けが反応しているのか、時折苦しげな声を出す最上。赤城、飛龍は頷いたが、その顔はつとめて感情を出すまいとしているようだった。利根は既に索敵機を放っており、彼女の心中も察せられる。

「如何にお主らの数が多かろうとも、同じ釜の飯を食った仲じゃ。敵に食わすなんて野暮な真似はさせん!」
 堂々と言い放つ利根に、高雄は嬉しくて目を細めた。戦意、という言葉が今の彼女たちに相応しい。どんなにプロトコルが脳を縛ろうとも、そこにいるのは、互いを気遣い合う戦士たちだった。高雄はこれでどうだ、と言わんばかりに金剛を見返した。これでどう、みんなあなたの事を思いやってるの、だから無茶しないで、私達を信じて――

 金剛の表情は青ざめていた。

「いらないデス。私一人で、十分なんデス」
 彼女の声は震えはじめている。
「私だけが犠牲になればいいんデス、だから、気休めなんていらないデス」

「どうしてそんな事を言うの」
 高雄が食って掛かる。
「いくら命令だからって……こんなの、酷すぎるわ。私達はもっと、互いを気遣いあいながら戦っても、いいはずじゃない。私達はもっと――」

「分かりきった事なんか言わないでっ!」
 金剛が叫んだ。その音圧が高雄を圧して、他の艦娘たちが差し伸べた手を金剛が払う。
「私達は――戦艦は、戦わなきゃいけないんです。敵を何隻も何隻も潰して潰して……そうでなきゃ、戦艦じゃありまセン。ただの屑鉄デス! サポートなんかいりません、頼んでまセン……! だから私なんて、放っておいてくださ、」

「敵襲じゃッ!」
 利根の叫びに全員が進行方向を凝視する。
「敵主力じゃ! 空母二、戦艦五、重巡三! 軽巡に駆逐もたくさんいるぞ、大盛りじゃ――」

 轟音と共に水柱が艦娘たちの手前に着弾し、凄まじい水圧と音圧が全員に降り注いだ。振り上がる海水らが声を押し潰そうとする。

「金剛を守って! 輪形陣ッ!」
 高雄が体調悪化のせいで燃えるような喉から声を振り絞り、金剛を囲んで陣を組み始める。先頭の高雄の後方には空母が位置した。未だに吐き気はおさまっていないが、まだ抗えている。戦艦の砲撃の合間を縫ってこちらに飛んでくる、雲霞のような攻撃機の群れ。既に赤城と飛龍は艦載機を発進させ、第一次攻撃にとりかかっていた。次々と吹き上がる水柱の向こうには、さながら生きたゴーレムと言った風情の重巡、凶悪な砲塔を備えた戦艦、そして艦娘たちの艦載機とは、似ても似つかない忌まわしい形状をした攻撃機を吐き出す空母ヲ級。他の艦娘たちが砲撃戦に移行する。海水が膨れ上がって爆破に近い物となり、砲弾が降り注ぐ音が空気を裂いた。

「No! way! こっちに来ないデ!」
《うるさい金剛》は砲塔を――深海棲艦ではなく、目の前の高雄に向けた。戦艦だけが持つ強固で凶悪で破壊的な砲塔が、深海棲艦を沈めるためのそれが、今は彼女に向けられている。湧き上がる怖気をふるい落とした高雄は、たまには私の言うことに従いなさい、と叫んで金剛に近寄った。付近で水柱が上がり、金剛が何を口にしたのか、聞き取れなかった。二発、三発。波音が荒く高雄の耳を揺さぶり、真上から海水を落とす。惨禍をもたらす砲弾が落ちる音が、こちらの砲撃音が、金剛の声を引き裂く。炸裂、炸裂、炸裂。そして高雄はついに聞いた。

「自爆しろって、言われまシタ」
 砲弾の嵐を立ち尽くす金剛の顔色には死相が浮かんでいた。
「もう砲塔と機関部に爆薬をたくさん取り付けまシタ、自分では外せまセン――提督から、直々に言われまシタ! お前は! 戦うために生まれたのだから、潔く死ねと! 殺して殺して殺しまくって、その挙句に敵を道連れにして死ねと! あの人から! そう! 言われましたッ!」
 涙を流し始めた金剛が、砲塔――おそらくあの時工廠で、爆破のための装置を取り付けたのだろう――を高雄たちに、他の艦娘に向けた。脇に吹き上がった水柱が金剛の足元をぐらつかせるが、彼女の目線は高雄から離れない。砲塔が震えていた。金剛の顔も震えていた。戦闘機同士のドッグファイトが上空で展開され、利根たちが何か叫んでいる。金剛も叫んだ。
「死ぬのは私だけで十分なんデース! この大一番で死ねない艦は、主力も潰せない艦は、ただの屑デス! 私だけが戦うんデス! あなたたちは――来るなッ! Go! Home! 帰れッ!」
 尚も水柱が吹き上がり、双方の攻撃機たちが墜落していく。飛び交う火炎と空気を切り裂く轟音が海原を修羅場に仕立てあげている。轟音轟音轟音。そして高雄が攻撃機に気を取られている隙に、金剛は彼女の脇を通り抜けた。彼女の服の裾から、今まで高雄が艤装だと思っていたものが――砲弾にも用いられる高性能爆薬がちらりと見えた。

「Shit! Shit! Shit!」
 金剛が矢鱈滅多に砲撃しながら、深海棲艦の群れへと突っ込んでいく。砲弾に潰され爆発する駆逐ロ級、戦艦の突撃に面食らったようになり、砲撃を受ける軽巡ト級、肉薄する金剛に歓声を上げて砲撃する重巡リ級。深海棲艦たちは各々の反応で艦娘を出迎えた。

「最上、利根、行くわよッ! 金剛を助けます――」
 突っ込もうとした高雄たちの前に水柱が吹き上がり、全身が海水まみれになった。金剛の砲撃である。爆音に半ば耳を塞がれた高雄の耳に、こっちに来るナ、という叫びが聞こえた。

 その声は紛れも無く泣いていた。

「高雄は下がっておれ!」
 利根が最上を引き連れて救出に向かおうとするが、金剛からの砲撃が――四十一センチ砲の威圧力が――それを妨害する。予想していなかったフレンドリー・ファイアに二人の体が躊躇する。こちらに攻撃が来ないのを良いことに、深海棲艦たちが金剛へと我先に砲撃を繰り出す。攻撃機が爆撃を繰り返し、金剛が煤と火傷にまみれていく。一発、二発、周辺の水柱がどんどん近くなり、金剛が死に物狂いで敵の只中へと飛び込んでいく。高速型戦艦が深海棲艦の渦中へと突き込まれていく。既に彼女は敵に包み込まれていると言っても過言ではなかった。最中の火炎はどのようなものか。彼女をめぐる至近弾と直撃弾はどれほどの嵐か。高雄の耳に聞こえる反響は、金剛が発したものか深海棲艦のものか。

「金剛っ!」
 高雄が遠い砲撃を繰り返しながら叫ぶ。あまりにも太陽は晴れ渡り、深海棲艦も金剛も、他の艦娘たちも、下で砲撃に引き寄せられては死んでいく魚たちも同様に照らしている。凪いだ風にも高雄は気づかず、ただ金剛と絶叫しながら攻撃を繰り返していた。なおも救出を強行しようとする利根の足元に水柱が吹き上がり、彼女は吹き飛ばされた。それを最上がこちらまで引きずってくる。どんどん金剛が離れていく。《うるさい金剛》の罵声が、嗚咽をこぼしながら撃つ姿が見えるようで、ふと高雄は、自分の頭に連装砲を撃ちこめばどうなるだろうと、破滅的な空想をした。多分自分の頭は吹っ飛ぶだろうが、これ以上金剛の事に煩わされずに済むだろう。だがとにかく高雄は我慢した。艦娘たちは、深海棲艦の奥底へと槍のように突っ込んでいく金剛を、見ている事しかできなかった。遠方からの、攻撃機による反復攻撃は戦艦らによる防空射撃のせいで効果がなく、金剛を助けるために全速前進する高雄の心中にも、他の艦娘たちの中にも諦念があった。まだ終わってもいないのに、何も変わらなかったという無常感と、そして一瞬後の無意味を予測した、静かな時間すら流れつつあった。物理的な距離はそれほどでもないのに、心の距離が遠すぎる。深海棲艦たちの砲撃が、雷撃が、攻撃機がいよいよ金剛を削っていく。彼女の髪飾りが脱落し、すぐ脇を吹き飛ばされた金剛がたたらを踏み、狂ったような泣いたような顔で連続砲撃をする。顔が吹き飛んだ深海棲艦が沈み、腕を飛ばされた戦艦が獣の顔で襲いかかる。最上と利根による砲撃は駆逐艦どもが盾となり、包囲に穴を開けられない。突入しようとした高雄に重巡からの直撃弾――弾き飛ばされた彼女は中破状態で、喧騒があまりに遠い。いよいよ肉弾戦もかくやと思われる距離になると、金剛はゼロ距離砲撃から重巡リ級の上半身を吹き飛ばし、戦艦タ級に体当たりして彼女らの攻撃を封じていた。今の金剛は獣の群れで戦う狼のようでもあり、あるいは大渦に巻き込まれた犠牲者のようでもあった。全てが遠い出来事だった。無力感に苛まれた艦娘たちは砲撃を続けながら、もう結末を予測し終えていた。

 一秒後の起爆を誰もが望まないながら、予測しきっていた。

 戦艦タ級の砲弾が金剛の足を粉砕した所か、残りの重巡たちが金剛を羽交い締めにしようと飛びかかった所か、あるいは金剛が自身の轟沈を真の意味で悟った所か、もしくは深海棲艦全てが特攻の裏の意味合いに気づいた所か――閃光が走った。海面上を走る風が艦娘たちの体を打ち、ついで金剛の装備と艤装と機関部に仕込まれた高性能爆薬による爆風が艦娘たちを吹き飛ばした。かつて十三万六千もの出力を持っていた戦艦の艤装を最大エネルギーで解放した衝撃は、この海域全体を包むほどの規模ではなかったものの、渦中の敵艦たちを粉にするには十分すぎた。閃光が眼前を包み込んで、一時的に目が見えなくなる。もし包囲網に飛び込んでいれば、高雄も轟沈どころか消滅していただろう。比較的遠距離にいた空母ヲ級は被害を受けなかったものの、発進させた攻撃機を全て粉砕され、呆然と立ち尽くしているようであった(後、ヲ級は残された艦娘らの砲撃によって撃沈された)。大きく波打った海が艦娘たちをきわどい所で飲み込もうとする。盛り上がり渦になり、何もかもを飲み込んでいく海の広さ。爆炎と小さく舞い飛ぶ鉄屑たち。上から降り注ぐチリと震える空気が戦域を包み込む。打ち付ける熱風は怨嗟の声のように艦娘たちの体にぶつかり、脇へと逸れていく。何かの残骸らしきものが高雄の横に落ち、海中に沈んでいった。グラウンド・ゼロに溢れた船の残り滓が、海面に吐き出されたものを艦娘たちに見せつける。炎によって彩られたそれはさながら海の上で執り行われる火葬のようであった。あれほどの戦闘が行われたというのに、微動だにしていない太陽と雲が静かに蠢きながら、海域に静けさをやがて呼び起こしていく。後ほど捜索をしたが、《うるさい金剛》の遺品は勿論、遺体すら見つけられなかった。彼女は文字通り粉微塵に吹き飛んだのだ。結局、屑鉄一つ残さないまま金剛はこの世を去った。こうして九人目の捨て艦作戦は終わり、最終的に艦娘たちは帰路についた。作戦は成功であり、この海域における敵主力は叩き潰された(高雄は無線スイッチをオフにしていたままだったので、怒りと不満を溜め込んでいた提督がそれを知ったのは帰港後の報告であった)。残りの深海棲艦は直に後退していくだろう。戦果の面で見れば素晴らしい首尾であったが、帰り際の艦娘たちは一言も喋らなかった。

 高雄の耳に、金剛が自爆直前に叫んだ、テイトク、という言葉が焼き付いて離れてくれない。


《中へ》
復路鵜
2014年04月20日(日) 13時07分42秒 公開
■この作品の著作権は復路鵜さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
上部分です。
金剛が爆沈するシーンがお気に入りなんですが、さすがにここで終えたら悲惨すぎるので続きをサラサラと書いてみたりしました!

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Click!! 30 Smiley ■2017-04-23 23:07:07 5.188.211.170
Click!! -20 Peerless ■2017-04-23 23:03:41 5.188.211.170
Click!! 30 Judy ■2017-04-23 21:45:50 5.188.211.170
Click!! -30 Bella ■2017-04-23 21:20:28 46.161.14.99
Click!! -20 Heloise ■2017-04-23 20:04:51 5.188.211.170
Click!! -20 Jetson ■2017-04-23 17:40:54 46.161.14.99
Click!! -30 Augustina ■2017-04-23 17:22:22 5.188.211.170
Click!! -30 Emmy ■2017-04-23 16:52:56 5.188.211.170
Click!! -30 Lorraine ■2017-04-23 16:36:54 46.161.14.99
Click!! 50 Vlora ■2017-04-23 16:19:35 5.188.211.170
Click!! 30 Ice ■2017-04-23 15:30:43 5.188.211.170
Click!! -30 Tiger ■2017-04-23 15:27:20 5.188.211.170
Click!! -20 Sherry ■2017-04-23 13:36:20 5.188.211.170
Click!! 50 Cayle ■2017-04-23 11:15:41 5.188.211.170
Click!! -20 Kindsey ■2017-04-23 11:05:37 5.188.211.170
Click!! 10 Rain ■2017-04-23 10:19:47 46.161.14.99
Click!! -20 Mimosa ■2017-04-23 09:06:31 46.161.14.99
Click!! -20 Randhil ■2017-04-23 07:32:51 5.188.211.170
Click!! 50 Missy ■2017-04-23 07:08:44 46.161.14.99
Click!! 30 Alla ■2017-04-23 05:40:35 46.161.14.99
Click!! -20 Bonner ■2017-04-23 05:23:39 5.188.211.170
Click!! 50 Bubbie ■2017-04-23 05:12:30 5.188.211.170
Click!! 30 Libby ■2017-04-23 05:12:17 5.188.211.170
Click!! -20 Deacon ■2017-04-23 04:49:08 46.161.14.99
Click!! -20 Karsen ■2017-04-23 04:14:47 5.188.211.170
Click!! 10 Stevie ■2017-04-23 03:57:24 5.188.211.170
Click!! 30 Mina ■2017-04-23 03:38:04 46.161.14.99
Click!! -20 Laquisha ■2017-04-23 03:27:03 46.161.14.99
Click!! Click!! Click!! 10 Evaline ■2017-04-22 21:58:51 46.161.14.99
Click!! Click!! Click!! -20 Nephi ■2017-04-22 21:50:52 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! 10 Ruvell ■2017-04-22 20:56:44 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! Click!! -20 Sewana ■2017-04-22 20:33:02 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! 50 Aggy ■2017-04-22 19:36:03 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! Click!! Click!! 50 Gracelin ■2017-04-22 19:18:19 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! Click!! -30 Lynda ■2017-04-22 18:51:17 5.188.211.170
Click!! 10 Lettie ■2017-04-22 18:22:35 46.161.14.99
Click!! Click!! -30 Caelii ■2017-04-22 17:30:39 46.161.14.99
Click!! Click!! Click!! 10 Dotty ■2017-04-22 16:40:58 5.188.211.170
Click!! -30 Lorena ■2017-04-22 16:13:27 5.188.211.170
Click!! Click!! -30 Butch ■2017-04-22 12:42:05 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! Click!! Click!! -20 Jennabel ■2017-04-22 10:05:33 46.161.14.99
Click!! Click!! Click!! Click!! Click!! 10 Randhil ■2017-04-22 09:00:25 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! Click!! 30 Ethica ■2017-04-22 06:43:31 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! -30 Gert ■2017-04-22 06:17:39 46.161.14.99
Click!! 50 Tilly ■2017-04-22 02:54:49 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! Click!! Click!! -20 Benon ■2017-04-22 01:52:43 5.188.211.170
Click!! Click!! 30 Jodie ■2017-04-22 00:25:26 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! Click!! Click!! 30 Denim ■2017-04-21 23:50:44 5.188.211.170
Click!! 10 Becky ■2017-04-21 19:39:32 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! Click!! Click!! -20 Klondike ■2017-04-21 19:22:18 5.188.211.170
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