【オリジナル】願わくば、星々の実りと愛を
【前書き】
 N-Art Communication 2014にて投稿させていただいた小説作品です。
 場所が美術展だったので、一話につき原稿用紙三枚分の掌編を用意しました。
 全年齢層にOKな作品です。
 こちらの作品は『願い、みのり、愛』というテーマに基づいて作りました。
 全部十話のオムニバス作品で、一カテゴリ二話掲載しています。
 そういえば掌作品を作るのは久しぶりの事だったので、さまざま試行錯誤ができました。
 どうぞおたのしみください。

【目次】
『ミード』
『願わくば』
『二人』
『僕とミケ』
『檻』
『待ち合い』
『愛を探して』
『彼に似合う花言葉とは』
『果実』
『実り』








『ミード』


 私が入り口に体を滑らせると、始めに見えるのは『ようこそウェルカム』という文字が記された紙と巨木めいたオブジェだ。この小さな地方運営の展示会ではテーマとして『祈り、みのり、愛』が掲げられ、それに倣う形で作品が作られている。絵や文章がテーブルの上を占めたり、あるいは立体物が置かれていたりと様々だ。時計回りに見ていくと、イーゼルに架けられた絵、ボードに貼り付けられた絵や写真、また音楽視聴コーナーが置いてある。装飾品も秋を思い起こさせる物ばかりだ。チラと横を見ると絵本が立てかけてあった。


 私は見て回りながら展示物の一つである俳句を見る。今回のテーマに沿った俳句が幾つか並べられていたが、しかし私は俳句に興味がある訳ではないし、そもそも展示会の作品を見に来たわけではない。


 ならどうしてここに来たのかと言うと、ここに立ち込める『ミード』を調査するためである。自己紹介が遅れたが私は霊視庁監査部第二課特別付属班に所属する。今日は国の仕事としてここに来た。霊媒検査機も持っており、手帖もある。そして受付では、何人かの男女が手に汗を握るような顔をして無言で私を見つめている。


 芸術作品から『ミード』が検出されるようになったのは数年前に遡るが、一言で言えば霊的現象だ。当初は騒霊現象や小火騒ぎ、瞬間移動等で大混乱であったが、霊視庁の創設によって収拾され始めた。どうして芸術品から霊的現象が起こるかは未だに定かではないが、しかしそうなるのだから私がいるのである。どうですか、と若い男が聞いた。まあボチボチですねと私は言った。現在は客が入る前であり、最終準備の段階でもある。つまりこれからテイクオフだ。彼らは祈る目つきで私を見ているが、それは私が首を横に振れば『ミード』の検出アリということで展示会は中止となるからだ。私は様々なオブジェを検出器を用いて確認していく。やがて部屋全体を見回り、一つを除いて異常なしと伝えた。異常があるものとは、と恐る恐る聞いてくる。


「この小説です。『ミード』の恐れがあるので、回収しても宜しいですか」
 私の言葉に一人の男が顔色を変えて立ち上がったが、他の人間に引き止められる。暴れる男を後ろに置き、私は認可書類を渡して礼を言って会場を出た。そして私は検出器を媒体に、『ミード』に……これを読んでいるあなたに語りかけている。文章では特にあなたのような存在が出現しやすい。おそらく【語る】等の行為があなたの世界と繋がりやすいからだろう。あなたはもうこの世界にはいられない。代わりにここから飛ばされ、別の世界に向かうことになるだろう。もう少しこの展示会を見ていたいと? あまりひとところに留まるのはお薦めしない。どうせなら、より多くの違う現実を見た方が楽しいだろう。


 私は封印用の封筒に似た封鎖装置を鞄から取り出す。そしてあなたの最後を見定めてから小説を箱に入れ、閉じていき……









『願わくば』


 母なる我らが地球が衰退しつつあることは明白だった。複雑な環境問題、分割され続ける面積、増え続ける人口。頼みの綱の宇宙開拓は技術開発が遅々として進まず、人々は希望を失いつつあった。


【願いましょう】というムーブメントが拡散されはじめたのはその時期からだ。大きく発達した電脳網や携帯電話、インターネットからチラシに至るまで、どこから出てきたか分からない運動は始まっていた。最初人々は奇妙な宗教と思って無視していたが、次第にそれはどこの家でも聞こえるようになってきた。ゲリラの首領が願うようになり、大統領の妻が身内のパーティーで願う事を宣言した。哲学者は願いの効果を論文で発表し、テクノロジーの進歩に邁進する物理学者でさえもが、仕事を終えて寝る前に願った。こうして人々は大なり小なり願うようになってきた。特定のリーダーや本部を持たない、所謂世界宗教とでも呼べるものがいつのまにか誕生しつつあった。だがそこに強制はなく、教えもなく、神もなかった。ただ願いだけがあった。


 そうして誰もがよく分からない中で億単位の人々が一斉に願い始めた。人々の精神を揺らがせながら願いは猛突進していったのだ。最初の影響は月に出た。変色していたのである。天文学者は困惑し、何人かが失神した。人々は願いの効果だと大きく喜んだ。科学者は猛烈に否定したが、しかし他に原因がなかった。真に不可思議な現象だった。そうしているうちに、太陽に影響が出てきた。黒点が増加し、また減少しては増加しはじめた。人々は調子づき始めた。もしもこのまま、我々が地球の繁栄と宇宙全体への拡散を願えばどうなるのだろう。この時点で国が公に『願いプロジェクト』に参与しはじめた。一秒に何十万人が、何十億人が仕事の手を休めて共に願った。


 かくて驚くべき効果が出始めた。少子高齢化に反発するように子供が産まれた。急速に貧困の度合いが低まった。異常に教育や道徳が効果を発揮し、犯罪率が極小まで低下した。兵士や軍人が戦場で泣きだし、戦争が消えた。社会内でのいざこざやこじれがなくなり、人々の心がさながら植物の如き穏やかさを得た。人々は驚嘆というよりも呆れた。凄まじすぎる効果だった。だが一部の人々の恐れを踏みつぶして大部分はもう止まらなかった。人々は願い、願い、また願い続けた。


 次の変化は月と太陽系で起き始めた。月の表面に急速に水分が発生し、太陽は燃え盛る中に生命体を作り始めた。進化の過程を早回ししていた。結果が過程よりも先に来た。建物が急速に作られ始め、レゴブロックのように生命体が出来始めた。願いは加速する。ぶくぶくぶくぶく星は膨らみ、広がり、生き物が発生した。人類はそれを迎え続けた。太陽系でも同じ事が起きていた。やがて人々は望遠鏡で見た。


 数多の星はすべて地球そのものになっていた。太陽も月も火星も木星も、何もかもが地球そのままの姿を抱いていた。










『二人』


 手を繋ぎ並んで歩いていた。少年と少女は二人、マスクで口元を覆いながらフゥフゥと歩みを進めていた。二人はボロボロのスニーカーを履いており、背中には傷だらけのリュックサックを担いでいた。男の子が川に目を向けると、何か見たのか泣きそうな顔で立ち止まった。少女が側に寄って進行方向を指さした。少年は二度三度顔を袖で拭くと、また歩き始めたが速度はさっきより緩慢だった。周囲には生物の気配が全くなかった。二人は後ろを振り返り、自分たちがやってきた埃まみれの道を見た。少年がまた顔をこすり、少女が頭をなでてやった。男の子は迷惑そうな顔で彼女を見たが、されるがままでいた。少女は川を見ると、土手に座って隣を叩いた。おそるおそる彼も座って、周りを見回した。川の流れがよく聞こえた。女の子が彼の肩を押すと、ごろごろと少年は転がり落ちた。叫びが灰色の土手に響いて、少女はゲラゲラ笑った。顔を真赤にした彼が上まで登って、少女の体をくすぐり始めた。二人は色の違うガラス同士のような声を立てながらゴロゴロした。やがて遊びに飽きた二人はゴミを払って立ち上がると、小さな足取りで歩き始めた。曇り空で影はできなかった。 


 夜になると、ちょうど良い廃墟が見つかったから二人は入った。オフィスビルが半分崩れたものだが、これ以上倒壊する事はないだろう。残り物の水ボトルを見つけると、少年は最初に少女に飲ませた。その間に彼は魚の缶詰を開けて、暗闇から隠すように食べた。カンテラが二人を照らしていた。少女が胸元から水と一緒に見つけた写真を取り出した。男と女と、子どもらしき少女が真ん中に挟まれていた。二人は小さな声でしゃべり合っていたが、やがて女の子が何か言い、顔を覆った。残響のような嗚咽が場を満たした。少年は呆然とした表情でいたが、少ししておずおずと女の子の体に腕を回した。女の子はゆっくりともたれかかって二人は抱擁しあった。寒々しい触れ合いだった。


 少年が少女の耳に口を近づけて何か言うと、微かに笑みを浮かべた少女は彼の頬に自分の頬を擦りつけた。マスク越しのくぐもった声が二人を繋いだ。それから少女は彼と指を絡め、垢だらけの掌を重ねあわせた。少年は顔を赤くしたが、自分から鼻と鼻をくっつけあった。皮膚が触れ合うと少年は霊感を得た顔つきになったが、黙っていた。フゥフゥと熱い息が静かに木霊した。少女の髪を撫でると透明な瞳で彼女が応えた。彼は天井に空いた穴から空を見つめ、もう見えない星々の名残を眺めた。廃墟の暗闇の隅で二人きりだった。背中を撫でていた少年が昔の子守唄を歌うと、少女は静かな笑顔になって目を閉じた。リズムも音程も何もない、みすぼらしい歌だったが、廃墟でそれは心よいものとして響いた。暗黒で彼は歌いながら、少女の心臓を感じていた。しばらくして少女の寝息が聞こえ始めたが、彼は暗闇に目を凝らし、彼女を抱きしめたまま暫く起きていたのであった。










『僕とミケ』


 飼い猫のミケが女の子になってからもう三日になる。最初はベッドが重いと思ったら少女が寝ているので心底驚いた。目覚めた彼女から事情を聞いて、眼前にいるのがミケだとようやく分かった。一体どうして人間になれたのかは分からない。とは言え両親はあまり家にいないのでちょっと気が楽だ。ミケの話によると、周囲の記憶は次第に改変されていくらしいから、男の子が一人しかいない家から女の子が出てきても騒がれないらしい。やれやれ、これじゃゲームだ。


「にゃはは。世間はたろう君が思ってるより複雑だにゃ。あ、ご飯おかわりにゃ」


「もう、大食いなんだから。それに僕はたろう君じゃないよ」と僕はご飯をよそって出す。テレビが天気について話している。そういえば、学校どうするんだろう。聞いてみたら、猫だから関係ないにゃ。と言う。ということはサボり? 本当に漫画みたいだ。


「でも疑問なんだけど、どうしてミケは人間になれたんだろうねえ」


「たろう君、彼女いないにゃ。それに不幸だってミケの前で何度も言ったにゃ」
 ミケが真顔で口にして僕は顔がひきつる。
「だからミケが幸せにしてあげるにゃ。ミケはいつでもたろう君の味方にゃ」


「ええ……それじゃ僕、ミケと付き合うってこと? 初恋が動物ってのはちょっと……せめて人間がいいなあ。学校の同級生とか」


「何を言うにゃ。ミケだってもう立派な人間にゃ!」
 ミケが僕にくっついてくる。猫だった筈なのにシャンプーの香りがしてドキッとした。落ち着け僕、相手は飼い猫だ。でもミケが体をすり寄せてきて温かかったり胸が当たったりでやっぱり興奮する。男って情けない。


「で、でもそれじゃミケが願ったから人間になれた、って事?」
 甘えていたミケは体をスリスリさせながら頷いた。夢に神様が出て願いを叶えてくれたにゃ、と言った。どうやら神様は動物には寛大らしい。


「じゃあ、神様っていい人なんだね……ってそんな所触らないで! 離れて!」
 僕が言うとミケはにゃはは、と笑って出て行った。


 その日の夜、寂しい寂しいと言うのでミケと僕は一緒の布団で寝た。断っておくけど、変なことはしてないからね。ペットと飼い主だし。


 翌日、目が覚めた僕は体が小さい事に気づいた。それに部屋が広い。だけどミケは女の子の姿でいる。僕は声をかけてみた。


「にゃあ」
 あれ? 起きていたらしいミケが薄目を開けた。


「たろう君は幸せじゃないから、ミケのペットになってくれるよう、神様にお願いしたにゃ。一回限りの一生のお願いだにゃ。きちんとお世話してあげるし、トイレも躾けてあげるにゃ。お医者さんで去勢もしてもらうにゃ。ミケは猫だったから、猫のたろう君の事は何でも分かるにゃ。名前はたろう君って前から決めてあったにゃ。良かったにゃ、たろう君」


 ミケの瞳孔が猫のように細まったのが分かった。










『檻』


 少女が檻に入れられて四日目になる。村は不作だったのだ。何年も森で果物がとれず、畑の作物は実らない。だから少女は生贄にされ、こうして村外れの檻の中で救いを待っている。少女は神と人々のために生贄になる事を選んだ。それが家族がおらず、友人もいない自分ができる事だと感じたからだ。だがそれが正しかったのか、疲労の坩堝で少女は分からなくなりはじめた。目の前にはパンと水の皿が置かれているが食べる気にならない。絶望が少女の中に巣食っていた。その夜、目の前に悪魔がやってきた。そいつは、


「よう、お嬢さん。辛くはないかね? 辛いだろう! 訳の分からない規律に囚われて、罪もないのに檻の中なのだから。俺はお前の苦しみを解く事ができる。簡単だ、檻から出れば良い。ほら鍵を開けた。さあ! さあ! 苦しみから逃げ出せ!」


「そうすればこの村に、作物が実るようになるのですか?」


「さあてね。俺様はそんな事は知らない。だがお前に道を与える事はできる。ここから出て、街道を真っ直ぐ行く。やがてキャラバンにたどり着くから、そこで孤児と言って拾ってもらうのだ」


「私は神を信じます。いずれ神様がやってきて、村を救ってくださいます」
 だが少女の疑いを悪魔は見抜いており、鼻で笑って言った。


「神だって! そんなもんがいれば不幸なんてないさ! それにお前、一人で苦しむのは辛いんじゃないかね?」


「……はい。正直、辛いです。日差しは苦しいし、誰も助けてくれません。来てくれたのは、悪魔、あなただけです。他には吹きつける風と照りつける太陽、そしてパンにたかる蝿だけです」


「そうだろう! お前が望むのは何だ? そうさ、お前の道を行く事だろう! お前にはお前の生き様がある! さぁ、出るのだ! 俺は今日しか来ない」


 娘は泣き始めた。
「きっと神様はおられないのでしょう。おられるなら、こんな悪魔をよこす筈がありません。私は一人きりです」


「だが俺が拾ってやる」
 悪魔は屈んだ。
「俺と共に来い。百万の富と財宝が待っている。王子との恋も教えてやる。なに、死後の魂など何だっていいじゃないか! 自分をもっと大事にしろ!」


 一拍置いて少女は手を伸ばした。だが手は悪魔でなくパンと水皿を掴んだ。パンを食い始める少女の目には涙と力が宿りはじめていた。


「今わかりました。神様はいませんし、人々は無慈悲です。いるのは悪魔だけです。でもこの世界には私もいます。だから私は、私が決めた事に従ってここにいる事にします。私は私の良心を救い、己を助けるのです」
 悪魔は厭な顔をして立ち去った。五日目に別のキャラバンが村にやってきて、大量の果実と引き換えに少女を連れて行くことにする。神とは無縁の異国の地で少女は優雅に暮らす未来がある。










『待ち合い』


「ああもう寒いな」


「全くその通りだ。コーヒー淹れるか?」


「いややめておく。合成モノを飲んだら余計にバタバタしちまうよ」


「違いねえ。しかしただ待っているのも辛いな。おい、シェルター外の気温はどうなってる? まだ零下三十度か?」


「いいや、零下二十度さ。いい加減にしてほしい寒さだ! こんなんじゃ雪解けの前に死んじまうぜ。予報じゃあと十五年後か?」


「待つしかないのさ。降り始めて何年だ? 確か六十年?」


「戦争直後に降ってるんだから八十八年だろ。ちくしょうめ、誰だよ発射ボタンを押した奴は。おかげで俺たちは穴蔵住まいだ」


「俺は気に入ってるぜ。ヒマな時間は昔の映画を見放題じゃないか」


「それも電気が通じて、フィルムが動く間だけだろ? まったく、よくもまあ何回も見て飽きないな」


「そういうお前だって、よく懲りずに外なんか出るな。まあ、おかげでカミさんと出会えたから良いのかね、こういうのは」


「へへへ。防寒服を着たマリアも素敵だったぜ。まさしく一目惚れさ」


「けっ、惚気かよ。俺も浮いた話が欲しいもんだね、映画だけじゃなくてな。しかし映写フィルムとディスクは史上最大の発明だと思うが、なんてあいつら核兵器や生物兵器も作ったんだ?」


「知るか、本か雑誌の読み過ぎで頭がおかしくなったんだろ。未だに復興できない俺らもバカだが、あいつらも相当のバカだな。くそっ、マリアは大丈夫かな。スタッフの奴らもあんなの初めてなんだろ? 俺も手伝えたらなあ!」


「お前さんが行っても失神するのが関の山さ。カミさんは一人で大丈夫だってあれほど言ってたんだ、お前もドッカリ気を持てよ。それにこのシェルターじゃ、こんな事はじめてなんだろ? 緊張して当たり前だよ。俺も緊張してるんだからな」


「そうかい。まあ、お前にも後で手伝ってもらうからな。覚悟しろよ、俺は映画ばっか見てるお前と違ってリアル志向なんだ」


「言うねえ。みんなこぞって顔を見に来るぞ。福でも分けてやれ」


「だからってええい……見世物じゃねえんだよ、こっちにとっては!」


「俺らにとっては良い出し物さ。しかも何十年と続く大長編だよ。こんな娯楽、昔の奴らにゃ考えつかなかっただろうな」


 おぎゃあ、おぎゃあ。分娩室で声がした。スタッフが叫ぶ声がする。


「おいおいおいおい聞いたか! ああスゲエな俺もお父さんだ! ちくしょうやったぜ! デイブ! 名前はデイブだ! 頑張るぞこの野郎め! こんちくしょう! ブラボー! やったぞマリア!」


 人類のこの冬の時代に、初めて花開いた実りである。後の復興ベビーブームの幕開けであった。










『愛を探して』


 旅人は愛を求めていた。彼は城下町を出発し、広大な砂漠を越えた。鬱蒼と茂る森をスブプらの助けで突破し、底の見えない谷底をダーゴを用いて飛翔した。幾千幾万の山を越え、数多の怪物を追い払った。そうして旅人は愛があると言われる、伝説の古城へとやってきた。


 だが古城には先客がいた。宝の間には黒い鎧に身を包んだ騎士が先んじていた。その騎士は今にも宝箱を開けてしまいそうだったので、狩人は投げナイフを騎士の足元へと投げつけた。騎士が振り向いた。長髪の女であり、顔には怒気が漲っていた。


「貴様、何をする」


「その宝の中身は愛であろう。私は一千里の彼方から愛を求めてこの地に参ったのだ。私が愛を手にする権利がある」


「戯言を。ならば私は二千里先からこの地へと赴いた。私こそ財宝を得る権利を持つのだ。尻尾を巻いて逃げ帰るが良い」


 旅人は顔を歪めて歯をむき出しにした。このような女如きに、愛を奪われてなるものか。旅人は素早く懐からマチェットを二つ抜き出すと、騎士へと躍りかかった。一方女騎士は長剣を抜き放つと反撃する。


 実力は伯仲していた。旅人が打つと騎士は返す。騎士が斬ると旅人が受ける。剣戟音が城内にこだまし、宝箱の中の愛だけが甲高い戦闘音楽を聞いていた。八回、九回と切り結んだ騎士が、不意に距離を取って片腕を向けた。混乱している旅人の肩に小型ボウガンの矢が突き刺さった。もんどりうつ旅人に騎士が跳びかかり、長剣を喉元に突きつけた。待ってくれ、女がいるんだ。と旅人は言った。


「そいつは昔に別れた女なんだが、この間、病気になったと風の噂で聞いた。身寄りもいない。看病をしてやりたいが、憎まれたままでは到底できない。だから愛が必要なのだ」
 騎士は黙っていたが、やがて口を開いた。


「私にも弟がいる。私が家業を継がず、騎士になったことを今でも恨んでいる。彼がひとりきりの家族だ。私は愛を用いて彼との仲を修復し、家族として共に暮らす――」
 騎士が語っている間に旅人は動いた。


 足を騎士に叩きつけると女が叫んだ。靴に仕込んでおいた隠しナイフだ。旅人は騎士が硬直した瞬間に剣を叩き落とし、マチェットで騎士を切り裂いた。女騎士は断末魔の叫びを上げ、倒れた。旅人はペッと唾を吐いた。別れた女などいない。単に彼は、万能の愛を売り払って大金持ちになろうと思っただけだ。彼が心を傾けたのは、金銀財宝だけだった。彼は豪華な装飾の宝箱に近づき、それを開けた。


 旅人の眼前に念願の愛があった。彼の目が黄金欲に輝いた。舌なめずりをした彼が愛を掴みあげたその時、愛は世にも恐ろしい悲鳴を発すると腐り落ち、後に残ったのは一文にもならない砂だけだった。









『彼に似合う花言葉とは』


 私が彼と暮らし始めて幾星霜。既に数十年を超えていた。市場で見かけた時、彼は他のエルフと同じく、何の変哲もない異種族に過ぎなかった。森の近くにあるその市場では種種雑多な種族がいたので、かえって目立たない程だった。とは言え商売のために人手が必要であり、人間に近ければ何でも良かった。


 荷馬車で家へと連れて帰る最中、彼は泣きだした。お母さんお母さんと泣いていたので、私はこいつは甘やかされて育ったのだな、と皮肉った。しかし後で知ったが、ここで言うお母さんとはエルフにとっての母なる森であり、彼は故郷に対する愛執から泣きだしていたのである。文献でそれを知った私は大層ショックを受けた。それは我々人間が故郷を離れる際に浮かべる涙と同様だったからだ。


 それから私は彼によく目をかけるようになった。彼は細身のエルフらしく重たいものを持つのは苦労したが、細かい作業には目端が利いた。仕事ができるので私は彼を可愛がるようになった。作業の休憩にコーヒーを差し入れたり、夕飯を私と共に食わせるようになった。それに伴い食事の質も格段に良くなった。彼はそれまで栄養失調に近くひどく痩せていたが、次第に筋肉と背丈を増していった。朝起きたら二サンチは伸びているように見えた時があって、私は驚いた。彼は次第に家族に近いものになってきた。共に食事をし、汗を流し、共に花を千切った。一緒に旅行もして、その時ミツコブラクダに乗せられた彼は苦笑いのように私を見た。故郷の森にも連れて行った。そして彼は今、私がこの日記を書いている横でベッドにて眠っている。


 実は私は、彼に対して言い知れぬものを感じる。それは不吉というよりも、さながら行き交う道に抜け道を発見した感覚に似ている。私よりも彼が強くなって久しい。既に剣の腕は彼の方が強く、筋肉も逞しい。だが彼は懸命に私を尽くしてくれるし、私も彼に応えていると思う。しかし私は彼の大胸筋に、足首の骨に、あるいは手指に並々ならぬものを覚える。歳を取って私も小さくなった。既に私が彼を庇護するというより、彼が私を庇護しているようだ。私は彼の衰えない美貌に、弛まない上昇に、そして粘り強い溌剌さにこみ上げる何かを覚える。それは彼に支えてもらう時に、あるいは食事の世話をしてもらう時に、もしくは口述筆記を頼む時にやってくる。彼は私を受け入れ、私は彼を受け入れる。だがエルフである彼はどこまでも伸びていく。いつからこうなったのだろう。なぜこの微妙な僅差が発生し、私は平衡感覚の上で呻吟しなければならないのか。私が彼と暮らしたのがいけなかったのか。なぜひっくり返ってしまったのか。私は解けぬ謎を片手に今日も眠る。この日記は彼に見えない所に隠さなければ。私は静かに、ただ静かにしていなければならない。彼の寝息はうつくしく心地よく、私は耳に燃えるものを感じる。









『果実』


 男が棒を押し始めてから数千年が過ぎている。ここは広場だろうか、と倦んだ心で男は思う。樹木のように突き立った物体がそびえ立っていて、人々がその周りで、突き出た棒を押しながら回っている。男もその一人だ。いつから始めたのか、いつ終わるのか分からない。押した分だけ音が響く。天国にしては不自由すぎる。地獄にしては自由すぎる。周りの男たちに何回か声をかけてみたが、誰も聞こえていないのか無視しているのか、棒を押す手は止まらない。やれやれ、と男は思いながら回している。たまにごろごろ、と木が立てる音がする。


 一日に数回ほど、樹木の上から何かが落ちてきて頭に当たる。それはリンゴのようで片手で齧ることができる。食っている間も棒を押せということか。男は左手で果実を持ちながら右手で棒を掴んでいる。足に疲れはなく、腕にだるさも感じない。そういえば果実の味は毎回違う、と男は何億回目になる事を思う。今回の果実はリンゴめいて甘いが、先ほど落ちてきたのはミカンのように後に残る甘酸っぱさがあった。その前はブドウのように淡々としていて、一度はスイカのように種が入っていた。ふっふっと種を吐きだした男はしばらく地面を観察していたが、やがて種が遠くの地面に沈むと二度と顔を出さなかった。男は果実を食いながらふらふらと歩みを進める。


 見上げる樹木には何もついてないかのようだ。いや、男の目に見えないほど遠くに葉が生い茂って、実は存在しているのかもしれない。もしくは何もない無の空間からこの果実が落ちてくるのだろうか。美味いことがわかっていても出処が分からないとな、と男は惜しみながら果実を食べる。五回も齧るとかさが減ってしまい、男は不安になる。もしやこれが俺の最後の晩餐ではあるまいか。食い終えると俺は消えてしまうのではないか。だが果実を食べて芯をしがんでも何も起きない。適度な重さの棒を押しながら男は、この果実がまた降ってくれればなあ、と思う。芯を投げるか投げまいか迷う。やがて男は意を決して残りを遠くの地面へと投げる。あの種のように沈むかと思ったが、まだ消えない。この苦行をやめて投げた果実の元へと走ろうか、と男は思う。駆けて、落ちた芯を掴みとる。そして俺は……俺は……自由を宣言するのだ。そうすれば空から無限に果物が落ちてきて俺は満たされるだろう。その確信があった。これから幸せになるだろう。この食う度に味が変わる果実を永遠に食する。だが走れば二度と果実が落ちてこない事を、実りが無くなることを男は何故か知っているので動かない。喚こうが、叫ぼうが、ここを離れた瞬間に果実は地面へと消えてしまう事を男は何故か知っている。瞬きした瞬間に果実は消えてしまう。男は棒を回している。他の男たちも回している。これから数千年間このままだろう。果実に満たされながら。


 やがて棒を回していると、上から果物が落ちてくる。









『実り』


 男は絵描きだった。過去形であるのは、もう描けないからだ。かつて家族がいた。すべて消え去り、男だけこの世界に残った。残された彼は個展を出して画集を出し続けた。エッセイや芸術書も書く機会があった。彼は描いた。何かよく分からない自身から突き上げる力に突き動かされ、ひたすら描いては出し、打ち合わせてはまた描いた。全ては新鮮な惰性であった。そうして、いつの日か描けなくなった。


 彼は歩いていた。おそらく山の中だろう。彼自身、自分の家を出てからどこを歩いたのか曖昧なのだ。既に十時間以上歩いていた。あるいは街にいては職質をかけられるから、山に分け入ったのかも知れない。樹木をかき分け、虫の住処を踏み潰しながら彼は歩いた。心は空白に近く、残りを家族や自分についての残骸が占めていた。途中で転び、滑り落ちると泥だらけになった。緑の匂いを纏って彼は歩き続けた。鳥が嘲りながら飛んでいき、狸が蔑んだ目をして逃げていった。彼は後ろ姿に石を投げながら歩いた。茂みを蹴飛ばしながら歩いた。


 やがて彼は崖に出た。よく晴れた日だったから山の尾根の向こうの向こうの向こうまで見えたが気分は一向に良くならない。かえって自然の雄大さが己を飲み込もうとしているのかもしれなかった。景色は一つの巨壁だった。そして自然は無情に男の中に分け入ってきた。ズボンを汚して体にくっつき、転べば口の中に押し寄せてきた。崖から離れて男は歩いていた。途中で熊も見つけたのだが、向こうは彼を無視した。一本の樹木に出くわすと、彼は石をぶつけた。当たるとそこが自分の皮膚だったかのように痛くなった。涙は出なかった。握り締めると石の成分が掌に入り込み膝を割りたくなった。地面に倒れ伏すと叫びながら転がった。猿のように叫んだ。彼は覚悟をし、やがてその瞬間がやってきた。緑。空。石。草。土。彼は一握りの土を食い、胃の中に押し込んだ。立ち上がった彼の瞳は自然そのものだった。


 彼は山を下りた。歩いて自宅兼アトリエに戻り、シャワーを浴びた。コンビニで米を買って食った。そうして筆を取って、描き始めた。抽象画めいた風景画で、彼の専門から大きく外れていた。度外れに大きく、色鮮やかすぎた。緑からはじまったそれに茶が加わり、樹木と樹木の間に乱雑な地面が加わった。多過ぎる色が加わった。秋の風景としてところどころに果物が置かれた。上空に太陽が掲げられたが、橙には他の雑種が多々混じり込んでいた。胃の土が彼に与え、そして溶けていく。虫を描き、雑草を描きこんだ。平凡な森だったが、平凡さの中にはじけ飛びそうな何かがあった。自然は彼を覆い尽くしていた。やがて絵に雨が描かれ、注がれ、降り注いだ。絵に湿りの気が出た。完成まで五日かかった。タイトルは『実り』になった。後に無名の作品だが評論家らに激賞される事になる絵を残し、彼はアトリエを出た。そのまま街に背を向け、どこかへと歩いて消えた。


《終わり》
復路鵜
2014年11月12日(水) 20時52分44秒 公開
■この作品の著作権は復路鵜さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
掌作品の片割れ。テーマが《願い、みのり、愛》という抽象極まりないものなので、調理に苦労した部分もありました。
個人的なお気に入りは【僕とミケ】と【実り】です。苦労したのは【果実】と【檻】なのです。論理のすり合わせがタイヘン!
次はまた違ったジャンルに挑戦しようかな! と! 思うのでした!
 お読み下さりありがとうございました。

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Click!! Click!! -20 Lark ■2017-04-26 16:07:33 46.161.14.99
Click!! Click!! Click!! -20 Prudy ■2017-04-26 14:54:24 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! Click!! Click!! -20 Jenibelle ■2017-04-26 14:27:52 5.188.211.170
Click!! -20 Lacey ■2017-04-26 13:52:54 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! Click!! 30 Kevrel ■2017-04-26 12:54:18 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! Click!! Click!! 30 Hines ■2017-04-26 12:19:47 46.161.14.99
Click!! -30 Takeo ■2017-04-26 12:04:08 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! Click!! 10 Namari ■2017-04-26 11:18:16 5.188.211.170
Click!! -20 Mildred ■2017-04-26 08:59:58 5.188.211.170
Click!! Click!! 10 Lyndall ■2017-04-26 08:56:10 5.188.211.170
Click!! Click!! 50 Ethanael ■2017-04-26 07:45:20 5.188.211.170
Click!! -30 Doll ■2017-04-26 06:16:42 46.161.14.99
Click!! Click!! -30 Chianna ■2017-04-26 03:13:11 46.161.14.99
Click!! Click!! Click!! Click!! 50 Cayle ■2017-04-26 02:44:01 46.161.14.99
Click!! Click!! 10 Johnette ■2017-04-26 02:39:33 5.188.211.170
Click!! Click!! -20 Thena ■2017-04-25 16:52:35 46.161.14.99
Click!! Click!! Click!! Click!! 50 Kaylan ■2017-04-25 16:10:05 46.161.14.99
Click!! Click!! 50 Servena ■2017-04-25 15:12:50 46.161.14.99
Click!! Click!! Click!! Click!! -30 Karsen ■2017-04-25 13:07:52 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! Click!! Click!! -20 Augustina ■2017-04-25 12:46:38 46.161.14.99
Click!! -20 Mina ■2017-04-25 11:45:51 46.161.14.99
Click!! Click!! 10 Sandy ■2017-04-25 11:43:41 5.188.211.170
Click!! 50 Artrell ■2017-04-25 11:27:28 46.161.14.99
Click!! Click!! Click!! Click!! 10 Roxie ■2017-04-25 10:52:54 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! Click!! -30 Kerryn ■2017-04-25 07:21:21 5.188.211.170
Click!! 30 Capatin ■2017-04-25 06:09:16 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! Click!! -30 Kaylin ■2017-04-25 06:00:23 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! 30 Brendy ■2017-04-24 23:51:20 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! Click!! 30 Jaylon ■2017-04-24 23:29:03 46.161.14.99
Click!! 10 Johannah ■2017-04-24 19:20:43 5.188.211.170
Click!! Click!! -20 Indy ■2017-04-24 18:55:34 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! Click!! Click!! -20 Delonte ■2017-04-24 17:58:39 46.161.14.99
Click!! Click!! Click!! Click!! 30 Lefty ■2017-04-24 17:39:35 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! -20 Destiny ■2017-04-24 16:19:43 46.161.14.99
Click!! Click!! 50 Jeanette ■2017-04-24 15:32:36 46.161.14.99
Click!! Click!! Click!! Click!! -20 Carley ■2017-04-24 10:31:43 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! Click!! 10 Laquisha ■2017-04-24 09:52:36 46.161.14.99
Click!! Click!! Click!! -20 Dortha ■2017-04-24 09:49:01 5.188.211.170
Click!! 10 Jalen ■2017-04-24 09:03:30 46.161.14.99
Click!! Click!! Click!! Click!! Click!! -20 Etty ■2017-04-24 08:23:53 46.161.14.99
Click!! Click!! 50 Kathreen ■2017-04-24 07:37:08 5.188.211.170
Click!! Click!! 10 Jenelle ■2017-04-24 07:29:21 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! Click!! Click!! 50 Jenita ■2017-04-24 06:48:05 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! 10 Roberta ■2017-04-24 06:24:43 5.188.211.170
Click!! Click!! -20 Happy ■2017-04-24 05:28:46 46.161.14.99
Click!! Click!! Click!! Click!! Click!! 10 Adonica ■2017-04-24 04:49:40 5.188.211.170
Click!! 30 Avari ■2017-04-23 22:39:59 46.161.14.99
Click!! -20 Rayann ■2017-04-23 22:12:22 5.188.211.170
Click!! 50 Kaylan ■2017-04-23 19:12:37 46.161.14.99
Click!! -30 Savion ■2017-04-23 18:07:31 46.161.14.99
Click!! 10 Dina ■2017-04-23 16:34:10 46.161.14.99
Click!! 50 Randhil ■2017-04-23 13:09:44 5.188.211.170
Click!! 30 Delonte ■2017-04-23 12:09:39 46.161.14.99
Click!! 50 Leidy ■2017-04-23 11:26:24 46.161.14.99
Click!! 10 Spike ■2017-04-23 11:11:00 46.161.14.99
Click!! 10 Neveah ■2017-04-23 10:43:57 46.161.14.99
Click!! 50 Affinity ■2017-04-23 08:28:10 46.161.14.99
Click!! -30 Xantara ■2017-04-23 07:09:25 46.161.14.99
Click!! 10 Essence ■2017-04-23 05:49:33 46.161.14.99
Click!! -30 Lenna ■2017-04-23 05:37:31 5.188.211.170
Click!! -20 Mateen ■2017-04-23 05:07:06 5.188.211.170
Click!! -20 Topher ■2017-04-23 04:21:51 46.161.14.99
Click!! 30 Tassilyn ■2017-04-23 02:27:01 46.161.14.99
Click!! Click!! Click!! Click!! Click!! -30 Nodin ■2017-04-23 01:26:34 46.161.14.99
Click!! Click!! Click!! Click!! Click!! 50 Alex ■2017-04-22 23:57:05 5.188.211.170
Click!! Click!! -20 Roberta ■2017-04-22 23:34:32 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! Click!! 30 Joni ■2017-04-22 23:16:02 46.161.14.99
Click!! Click!! Click!! Click!! Click!! 50 Jaydee ■2017-04-22 22:21:31 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! Click!! 50 Nodin ■2017-04-22 21:18:23 46.161.14.99
Click!! Click!! Click!! Click!! Click!! 30 Foge ■2017-04-22 19:02:31 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! -20 Delonte ■2017-04-22 17:08:18 5.188.211.170
Click!! Click!! 50 Aileen ■2017-04-22 16:39:58 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! Click!! Click!! 10 Eddie ■2017-04-22 14:44:05 46.161.14.99
Click!! Click!! Click!! -20 Parmelia ■2017-04-22 11:30:35 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! Click!! 30 Kayleigh ■2017-04-22 11:20:12 46.161.14.99
Click!! Click!! Click!! Click!! Click!! 10 India ■2017-04-22 10:36:30 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! 10 Chasmine ■2017-04-22 10:00:40 46.161.14.99
Click!! -30 Bubbie ■2017-04-22 09:28:08 46.161.14.99
Click!! 30 Betti ■2017-04-22 07:25:23 5.188.211.170
Click!! 10 Lacey ■2017-04-22 07:22:54 46.161.14.99
Click!! Click!! Click!! Click!! -30 Janessa ■2017-04-22 06:34:29 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! -20 Bryson ■2017-04-22 00:05:03 46.161.14.99
Click!! Click!! Click!! -30 Lisa ■2017-04-21 21:01:14 5.188.211.170
Click!! Click!! Click!! Click!! Click!! 10 Rumor ■2017-04-21 20:55:08 46.161.14.99
Click!! Click!! Click!! 10 Navid ■2017-04-21 18:18:10 46.161.14.99
Click!! Click!! Click!! 10 Kailan ■2017-04-21 18:11:21 5.188.211.170
合計 620
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